月刊『ブレーン』の人気連載「デザインの見方」が、『WHAT IS DESIGN? デザインの見方 ~トップクリエイター50人の視点と原点~』として書籍化しました。ここではクリエイターの皆さんに、読みドコロを紹介してもらいます。今回は電通のコピーライター 阿部広太郎さんが、同じく電通のアートディレクター 八木義博さんの回の“見方”を紹介します。
デザインとは一体なんだろうか?
仕事の現場で、私たちはときに立ち止まる。目の前の企画書とにらめっこをし、モニターに映る企画案の前でもっとよくできないかと粘る。そんな自分は、決して一人きりではないことを本書は教えてくれる。
特に印象的だったのは、八木義博さんが紹介する山田詠美さんの『ぼくは勉強ができない』のエピソードだった。
「だけど大切なのは、出来上がったものがクライアントの課題解決に繋がること。僕は、デザイナー個人の評価よりも、クライアントの役に立つ実際的なデザインを提供していきたいと思っています。それが実現できているなら、誰に何と思われてもいいじゃないかーそんな揺るがない考えを持てるようになったのは、この本のおかげです。」
山田詠美『ぼくは勉強ができない』(新潮社、1993)
心の中でマーカーを引いてなんども読み返した。自分がコピーライターとしての役割を果たすときも、クリエイティブディレクターとしての役割を果たすときも、自分の仕事はここにあると感じる。
武者震いするような相談を受け、クライアントといっしょにひとつのものをつくりあげていく。さまざまな制約や条件の中で行き詰まることがあっても、チームで夢中になって駆け抜けていく。その先に生まれる成果物が、ちゃんと伝わりますようにと祈るように仕事をしている。そしてなにより、過程も結果も嬉しさや喜びを分かち合うものにしたいと思いながら。
その上で改めて考えたい。デザインとは一体なんだろうか?
私は思う。それは可能性を引き出すことではないか。輪郭をつけて、際立たせて、みんなが気付く導線をつくる。あるけれども見えていなかった魅力に光を灯す営みなのかもしれない。
タイトルにある「WHAT IS DESIGN?」。この自問自答こそが、目の前の仕事を強くしていく。この本に登場する50人のトップクリエイターたちがどんなデザインに影響を受け、今があるのか、それがとてもよくわかる。勉強になるというより、自分なりのこの温かな読後感を伝えると、「読むと、やる気が湧いてくる。」このひと言に尽きます。
「デザインの見方」の見方
【発売中】
『WHAT IS DESIGN? デザインの見方 ~トップクリエイター50人の視点と原点~』
○登場者:浅葉球/粟辻美早/池澤樹/石井原/居山浩二/色部義昭/上西祐理/えぐちりか/大島依提亜/大島慶一郎/大塚いちお/岡崎智弘/柿木原政広/金井理明/河合雄流/木住野彰悟/北川一成/木村浩康/河野智/小杉幸一/佐々木俊/佐藤夏生/シマダタモツ/清水恵介/関戸貴美子/立花文穂/田中元/田中せり/田中千絵/田中良治/田部井美奈/丹野英之/戸田宏一郎/中野豪雄/中村至男/西岡ペンシル/西川圭/西田剛史/庭野広祐/野間真吾/浜辺明弘/菱川勢一/平野篤史/藤田重信/松田行正/三澤遥/八木義博/矢後直規/山田和寛/YOSHIROTTEN
○発行元:宣伝会議
○編集:月刊『ブレーン』編集部
○定価:2,200円(本体2,000円+税)