広報会議サミットでは、ユーグレナ サステナビリティ推進部 部長の宮澤郁穂氏が講演。広報会議サミットの講演では、微細藻類ユーグレナが、食品や化粧品などのヘルスケアや燃料、肥料・飼料の農業分野など、様々な領域で活用が広がっていると紹介があり、会場でユーグレナを10億個配合したドリンクも配布された。
2005年、世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名ミドリムシ)の食用屋外大量培養に成功し、食品・化粧品のヘルスケア事業、バイオ燃料事業、バングラデシュでのソーシャルビジネスなど多角的な事業を展開するユーグレナ。「サステナビリティ・ファースト」をフィロソフィーに掲げ、「自社の事業成長=社会問題の縮小」となる状態を目指す。
サステナビリティ推進部では、事業企画や商品開発がどういう社会問題の解決につながっているか、さらには、発信戦略まで一気通貫して考え、各部門との連携を図っている。
ファンを増やす発信
「『自社の事業成長=社会問題の縮小』という構図に共感するステークホルダーを増やしたいと考えています。企業ブランディングの面では、私たちが目指す未来は何か、提供できるソリューションや強みは何か、といった発信を意識しています。一方、商品マーケティングの面では、どのような社会問題を解決できる商品なのか、どのようなライフスタイルの人たちに届けたいのかについて分かりやすく伝えること、そしてエビデンスにもとづいた広報活動が重要だと考えています」とサステナビリティ推進部 部長の宮澤郁穂氏。
CFO募集で話題に
では具体的にどのようなコミュニケーション活動を実施しているのか。これまでの施策の中でも、反響が大きかったもののひとつが、「CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)募集」だ。
応募条件を18歳以下の未来世代としたことで話題となり、CFOは同社のサステナビリティ経営に対し提言を行う役割を担った。
「飲料商品の容器をペットボトルから紙製に変える意思決定をする際、変更を後押しする提言をしたのはCFOでした」と宮澤氏。CFOの取り組みによって生まれた成果を積極的に対外発信したことで、CFOの取り組みを採用する自治体や企業も出てきている。
会社として未来を変えていくためには、未来を生きる当事者である子どもたちが議論にもっと参加していくべきではないか。そうした思いから、CFOを18歳以下限定で一般募集し3代のCFOが誕生した。この取り組みを経て、現在ユーグレナ社では、企業と未来世代の「共創」を目指す次なるフェーズに進んでいる。写真は、出雲充社長が未来世代と議論している様子。
継続して発信を続けている取り組みもある。それが「ユーグレナGENKIプログラム」だ。バングラデシュの栄養問題の解決のため、ユーグレナクッキーを現地の子どもたちに無償配布するというプログラムで、ユーグレナ社は寄付金やグループの商品の売上の一部をこのプログラムの運営に充てている。
2024年にプログラム開始10周年を迎え、記念イベントを実施。そこには、顧客や、株主、取引先が参加し、メディア誘致も行った。
「記念イベントを通じて、ファンの方の熱量をメディアにも体感してもらいました。10年間取り組んできたバングラデシュの栄養問題改善活動や今後について知っていただく機会となり、これを機にメディア露出にもつながりました」(宮澤氏)。
バングラデシュでユーグレナクッキーを無償配布し、栄養問題の改善に挑む「ユーグレナGENKIプログラム」が2024年で10周年となった。バングラデシュは出雲社長にとって創業のきっかけとなった地。学生時代に、栄養失調に苦しむ子どもたちを目の当たりにし、栄養問題の解決を決意したという。こうしたストーリーも、10周年記念イベントの実施により、改めてメディア露出につながった。
メディアリレーションにおいては、バイオ燃料のような専門性の高い事業に関してメディア勉強会を複数回開催して解説するなど、内容に応じた広報アプローチを実践している。
2024年は、同社初の子ども向けドリンクを発売。商品広報においては、子どもの健康が気になる子育て世代をサポートする商品であることを発信した。「子育て世代を対象に、子どもの健康に関する調査を行い、その結果や専門家のコメントも用いてリリースしました」(宮澤氏)。
成果をどう測るか
こうしたコミュニケーション施策の成果を、宮澤氏はどのように捉えていこうとしているのか。
「大きなゴールを(1)持続的な成長=ファンを増やす、(2)社会問題の縮小としたとき、(1)については、メディア掲載件数やSNSのシェア数、オウンドメディアのPV数など、広報施策後の変化がKPIのひとつになります。ただし数値が上がったとしても質をどう評価するかなど課題は残ります。(2)については、バイオ燃料の導入数、バングラデシュにおけるクッキー配布数、他社・他団体のCFOの取り組みの採用件数など、社会的なインパクトをなるべく数値化することを試みており、(1)と(2)を連動させられるとよいと考えています。また当社には、株主が11万人いますが、商品の愛用者の方もいれば、商品を購入したことがない方もいます。どのようなアプローチがさらなるファンづくりにつながるのか、事例を重ねることで仮説検証を続けていきたいと思います」(宮澤氏)