欲望トレンドは「ポジティブ・ブースト」 電通、最新の「欲望未来指数」発表

電通の消費者研究プロジェクトチーム「DENTSU DESIRE DESIGN」は12月4日、消費者の消費に対する欲望の増減を予測する「欲望未来指数」の最新版を発表した。

「DENTSU DESIRE DESIGN」は、人間の消費行動に強く影響を及ぼすドライバーとなる感情を「欲望」と定義し、消費者が消費に至るまでの動機や行動を研究するプロジェクト。

消費者の消費に対する欲望の増減を予測する「欲望未来指数」は、2021年から実施している「心が動く消費調査」をもとに、物価や景気、経済状況といった外的要因ではなく、「欲しい・したい」という消費者の気持ちの増減を可視化したもの。

現代の消費者が持つ43種の「根源的欲求」と105種の「価値観基盤」、また「これから欲しいもの・したいこと」といった消費につながる具体的な意欲をもとに算出している。

なお、2023年11月から15〜19歳を調査対象者に追加。そのため、2023年5月以前の結果は参考数値となっている。また、3月に発表した「11の欲望」のリニューアルをふまえ、過去の「欲望未来指数」についても見直しを行ったうえで、算出を行った。

「欲望未来指数」の最新版

電通の同チームによると、多くの指標が前回調査(2024年5月)を大きく上回り、消費意欲活発化の兆しが伺える結果となった。

「欲望未来指数」の推移

グラフ その他 「欲望未来指数」の推移

最新の「欲望未来指数」は、前回調査と比較して30.4ポイント上がり、255.4という数値になった。2023年11月水準まで回復しており、経済の停滞や物価高などを背景に欲望を抑えていた前回調査から、消費者の消費意欲が活発化していることが伺えるという。

2024年11月調査における「欲望未来指数」と「11の欲望」

グラフ その他 2024年11月調査における「欲望未来指数」と「11の欲望」

「11の欲望」は、「心が動く消費調査」から得られたデータをもとに、人間の消費行動を駆り立てる感情を 「11の欲望」として可視化したもの。今回は9つの欲望が前回のスコアから増加した。

同チームは、昨今の金利上昇、円安、生活コスト増などに対応しながら、消費者の消費意欲が再び高まりつつあると推察している。

欲望別に見ると、「1.他人という鏡に映した欲望」「6.資本集中型消費欲望」「7.守りたいものがある欲望」「10.愛がなくちゃね欲望」「11.あっ、コレわたしっぽい欲望」の5つが過去最高値に。なかでも、「1.他人という鏡に映した欲望」「6.資本集中型消費欲望」「7.守りたいものがある欲望」は前回調査から20ポイント前後増加した。

同チームは、他者からの見られ方を気にする意識や、他者や社会に対する貢献意欲が高まる一方で、自分の好きなもの・ことに対して集中的にお金を使いたいという欲望も上昇傾向にあり、外向き・内向きの両方向で欲望が高まっている様子が伺える結果だと分析し、消費意欲の活発化が来年以降に期待されるという。

「欲望トレンド2025」

「欲望トレンド」は、同チームが提唱する11の欲望をもとに、最近の社会現象を欲望の観点から分析し、今後の日本社会における欲望が複数のトレンドに集約していくと予測したもの。

さまざまなヒット商品や流行現象などと、同チームの独自知見やコンテンツ分析を掛け合わせ、消費者の内面にある満たされた気持ちや思考を抽象化することで、来年以降にトレンドとなりそうな欲望の萌芽をキーワードとして抽出した。

その中でも、2025年のメイントレンドになり得るキーワードとして、「ポジティブ・ブースト」を取り上げている。

「ポジティブ・ブースト」の概要は以下の通り。

  • 物価高や経済停滞といったネガティブな情勢に影響される日常において、圧倒的に明るく・優しく・楽しいモノゴトや、それらを連想させるような自分にも世界にもポジティブなものを選びたいという消費者心理。
  • 目の前の消費においては、明るく前向きな気持ちでいたい、そういった気分にさせてくれるものに人々が引き寄せられる傾向がトレンドとして芽生えてきた。

また、具体的な事象としては次の4要素が挙げられている。

  • 圧倒的成績や偉業を達成するアスリートや文化人に関連するアイテムで、ご利益にあやかりたい。
  • 商品そのものも、商品名も、優しさのフィルターバブルで包み込んだようなものに惹かれる。
  • 自身の生活スタイルにも「仲間がいる」安心感として「界隈」が心理的安全性を担保してくれる。
  • 自分の劣等感を吹き飛ばしてくれる“自己肯定感”を爆発的に上げるコンテンツが人気に。

「11の欲望」の視点でみると、新型コロナウイルスの影響が大きかった2023年までは「2.無理のない自由への欲望」や「3.心身平常運転の欲望」に代表されるような「波風や浮き沈みの少ない、いつもと変わらない平穏」を求める欲望が上昇傾向にあったが、今回その2つの欲望は前回調査から引き続き、低調の傾向に。

一方で、「1.他人という鏡に映した欲望」「6.資本集中型消費欲望」「7.守りたいものがある欲望」といった外向き・内向きの両方向で欲望が高まっているという結果から、生活の中で自身を明るい気分や前向きにしてくれるものを手に入れる消費行動により、ポジティブな暮らしを人々が望んでいる様子が伺えると同チームは考察している。

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