パーパス経営の真の姿は「美しさ」の追求にある~『パーパスの浸透と実践』によせて(名和高司)

パーパスが時代のキーワードとなってきた。大企業も中小企業も、パーパスづくりに熱心に取り組んでいる。しかしその過程で、大きく3つ課題にぶつかる。①そもそも、自社ならではのパーパスを作るにはどうすればいいか、②それをいかに組織に浸透させればいいのか、③パーパス実践に向けて社員の行動変容をいかに促すか。

本書は、そのようなパーパス経営実践上の悩みに、多くのヒントを与えてくれる。上記の3つ課題に加えて、パーパスを導入する前の準備から解きほぐしてくれるので、すっと入っていける。

圧巻は、②の浸透活動についての手引きだ。自分ごと化(マイ・パーパス)に至るまでの具体的なステップを、ていねいに紹介している。富士フイルムホールディングスの事例を、当事者とのインタビューを通じてつまびらかにしてくれているので、具体的なイメージも湧きやすい。

私が個人的に好きなのは、最後の「実現 グレートネス」という章だ。ここで筆者は、「ビューティフル(美しい)」という言葉で、パーパスが目指す世界観を表現している。

経営はアート(芸術)であり、美しさを追求することこそ、パーパス経営の真の姿だろう。美は、それぞれが思い思いに描けばよい。私も最近は、パーパスの目指す姿を「北極星」ではなく「星座群」と表現している。

ただし、独りよがりに終わってしまってはもったいない。自分たちが掲げたパーパスに、一人でも多くの社内外の同志に共感を覚えてもらいたい。そのためには、パーパスブランディングの活動がカギを握るはずだ。

読者の皆様も、この最終章のストーリーを大切にして、パーパス経営の実践に力強く乗り出していただきたい。

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名和高司(なわ・たかし)

京都先端科学大学教授/一橋大学ビジネススクール客員教授

マッキンゼーで約20年間勤務。デンソー(~2018年)、ファーストリテイリング(~2022年)、味の素(~2023年)、 SOMPOホールディングスなどの社外取締役、朝日新聞社の社外監査役(いずれも現在も)を歴任。消費者庁「消費者志向経営賞」座長。ボストン・コンサルティング・グループ(~2016年)、インタープランド、アクセンチュア(いずれも現在も)などのシニアアドバイザーを兼任。『パーパス経営』、『CSV経営戦略』、『シュンペーター』、『企業変革の教科書』、『経営変革大全』、『コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法』、『10X思考』

「企業が成長し続けるための7つのステップ パーパスの浸透と実践」
著者:齊藤三希子
定価:2,420円(本体2,200円+税)

近年、多くの企業がパーパスを掲げるようになりましたが、その浸透にあたりさまざまな課題を抱えているところも少なくありません。本書はそんな課題を持つ皆さんに向けて、日本で早くからパーパス・ブランディングに取り組んできた齊藤三希子氏が書下ろしました。多くの人にパーパスを正しく認識・活用してもらうべく、その考え方、言葉の使い方などを解説。そして今回は、多くの企業で課題の多い「浸透と実践」の部分にスポットを当てて、パーパス実現への道のりと各過程における具体的な実践方法を解説しています。

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