ニューヨークでハイボールが新たな価値を持って広まり、再定義されつつあるのをご存じだろうか。サントリーは、文化と多様性の中心地であるニューヨークで、日本の職人技とハイボール文化を融合させ、新たなハイボール体験を提供している。異文化の理解を前提に、ローカライズと文化的フィルターを駆使したブランディング戦略が、いかにしてアメリカ市場に浸透しつつあるかを掘り下げてみよう。
サントリーは、アメリカ市場、特にニューヨークにおいて、日本の伝統をそのまま持ち込むのではなく、現地の食文化やカクテルトレンドに調和させたブランディングを展開している。消費者が多様な背景を持つこの都市では、ハイボールを単に紹介するのではなく、ニューヨーカーのライフスタイルに寄り添う形で伝えることが重要であった。こうして、単なる飲み物の提供を超え、ニューヨークの文化と日常に溶け込む「懐かしいようで新しい」体験の提案として、「サントリーが展開するハイボールのあるニューヨーク流ライフスタイル」が生まれたのである。
Photo: Niena Etsuko Hino
1. 日本の伝統とニューヨーク市場の融合
サントリーは、2008年に日本国内で成功を収めた「角ハイボール」キャンペーンを基盤に、アメリカ市場へのハイボール文化の広がりを目指している。ニューヨーク市場においては、日本のハイボール文化と“職人技”を、ウイスキーとソーダのバランス、温度管理、炭酸の効き具合まで細部にこだわって伝えている。「サントリーウイスキー TOKI<季>」を提供する「TOKI・ハイボールマシーン」の導入によって、日本と同等のクオリティのハイボールをニューヨークでも楽しめるようになり、この徹底した飲用時品質の管理はニューヨークの高級バーやレストランで高い評価を得ている。
ニューヨークは「体験に価値を置き、それに投資する」都市だ。そしてサントリーもその点を重視している。地域性や季節ごとにテーマを設定し、ターゲット層向けにユニークな体験イベントを開催することで、消費者がハイボールをより身近に感じることができるようにしている。これにより、ハイボールは単なるカクテル以上の存在として、ニューヨークの日常の一部として浸透しつつあるのだ。
2. ローカライズの重要性とニューヨーク市場での課題
ニューヨーク市場においては、日本の文化をそのまま紹介するだけではなく、現地のライフスタイルや嗜好に合わせたローカライズが不可欠である。ニューヨークはトレンド発信地であり、消費者は革新性と多様性を求める。サントリーは、ニューヨークの飲食業界と提携し、現地の嗜好に合ったハイボールのバリエーションを提供している。たとえば、グレープフルーツやミントを加えたアレンジは、ニューヨークのカクテル文化に自然に溶け込み、幅広い層に支持されている。ニューヨークの消費者は、音楽やファッション、アートといったさまざまなカルチャーと交わる体験を好む。サントリーにとっては、ハイボールを「どのようなシーンで楽しめるか」という具体的なビジョンを示すことが、より一層の浸透における鍵であり、消費者に自身の日常にどうハイボールを取り入れられるかを想像してもらうことが、ブランディングの重要な要素といえる。
3. イベントやプロモーションを通じた文化的アプローチ
サントリーは、ニューヨークでハイボールの魅力を伝えるため、イベントやプロモーションによる体験価値の提供に注力している。その一つが「TOKI Highball Week」だ。このイベントではニューヨークの消費者がハイボールを楽しむだけでなく、日本の居酒屋文化やハイボールに合った和食とのペアリングも体験できる。TOKI Highball Week開始の際に行われた現地のバーテンダーを招待した会では、参加したバーテンダーが食事をしながら新しいハイボールのアレンジを思いつくシーンもあり、自由でクリエイティブな発想を生み出すきっかけも提供している。このように、異文化間で生まれる新しいスタイルを創造する場にもなっている。こうしたイベントは、バーテンダー自身、そして消費者とブランドとのエンゲージメントを深めるだけでなく、「サントリーが展開するハイボールのあるニューヨーク流ライフスタイル」というストーリーを体感させる貴重な機会なのだ。これもまたブランドを語る重要な要素である。
Photo: Niena Etsuko Hino
TOKI Highball Week参加飲食店の中の一つで開催された、現地バーテンダーを招待したイベントで提供された一皿。参加店舗それぞれが、TOKI Highballに合ういくつかのメニューを考案し、お客さんたちにマリアージュを楽しんでもらっている。
懐かしくも新しいタイムレスな体験~サントリーが展開、ハイボールのあるNY流ライフスタイル②に続く