米国文化の中に根付かせるブランディング戦略~サントリーが展開、ハイボールのあるNY流ライフスタイル①はこちら
ニューヨークの消費者は、革新性を追い求めながらも、どこか懐かしさを大切にする特性を持っている。ハイボールは、そうしたニーズと親和性が高く、「懐かしくも新しい」飲み物として、ニューヨークのライフスタイルに浸透しつつある。低糖質で爽やかなハイボールは、伝統的でありながらもヘルスコンシャスな現代人の意向に合致しているのだ。
1. 健康志向と新しい飲み方の提案
ニューヨークでは、飲酒率の低下と健康意識の高まりが進行している。そのような中、ハイボールは、低糖質で爽やかな味わいから、若年層からシニア世代に至るまで、ギルトレスな(罪悪感の少ない)アルコールドリンクとして支持を集めつつある。健康志向を重視する層にとっても受け入れやすい「軽さ」「爽やかさ」「糖質の少なさ」は、他のウイスキーベースカクテルとの差別化につながっているわけだ。
2. ローカライズと現地フィードバックの活用
ニューヨーク市場でのハイボールの「懐かしくも新しい」スタイルは、現地消費者の好みに合わせた柔軟なアレンジが重要な役割を果たしている。例えば、TOKI Highball Weekのキックオフイベントが行われた際に提供されたハイボールの一つは、Hello Kitty Fizzという名前で、サントリーウイスキーTOKIをベースに、ココナッツ・ウベ、ユズ・コーディアル、そしてソーダで割られている。その味と見た目の軽やかさ、柔らかさ、フルーティーさで、従来のウイスキーとハイボールの一般常識に、一気に幅を持たせ、楽しさを与える役割を果たしていた。サントリーは、現地の好みを把握したバリエーション展開で、ハイボールを「ニューヨーク流」に発展させ昇華させているのだ。
Photo: Niena Etsuko Hino
TOKI Highball Weekのキックオフイベントの様子。
3. グローカル・チームによる戦略的ブランディング
サントリーのニューヨークでの躍進には、日本と現地メンバーで構成された多国籍のグローカル・チームの活躍が不可欠だった。そのチームメンバーは7名で、ローカルのメンバー6名と日本のサントリーからの業務用営業パーソン1名という構成だそうだ。米国内で酒類卸のセールス経験者、プロのバーテンダーや優秀なミクソロジストなど多様なバックグラウンドを持ち、それぞれが日本でハイボール文化を体験し、それを愛して、普及しようという思いを同じくした集団だそうだ。その情熱を持って、ニューヨークのバーテンダーやレストラン経営者と連携し、消費者の嗜好や現地での文化的要素を取り入れることで、単なる日本からの輸入ではなく、ニューヨークの生活に根付いた「タイムレス」なライフスタイルの一部としてハイボールを広めていくことができているのだ。
4. イベントとプロモーションの成果
10月初旬「TOKI Highball Week」は、ニューヨークのみならず他都市でも開催され、それぞれの地域にフィットした体験が提供された。また、ファッションやアートと融合する文化的なプロモーションも展開しており、親和性のあるファッションブランドのイベントに、サントリーウイスキーTOKIのハイボールマシーンを設置して、参加者に試飲してもらうという試みを展開している。
今後、ニューヨークでの成果を基盤に、アメリカ全土に新しい飲み方としてのハイボール文化を広げ、「それぞれの地域流ライフスタイル」を背景に、アメリカ各地でのプロモーション活動を展開し、特に若い世代へのアプローチを強化していく予定だという。今後も、タイムレスで魅力的なライフスタイルの一部としてハイボールが広まっていくことで、アメリカにおける新しい飲み方スタンダードの一つとして定着していくことを期待している。
米国市場に参入した背景と戦略~サントリーが展開、ハイボールのあるNY流ライフスタイル③に続く