ACC(All Japan Confederation of Creativity)は、12月6日に「2024 64th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」の贈賞式を東京ポートシティ竹芝 ポートホールにて開催した。
本アワードはコロナ禍以降、講評・贈賞など全てのコンテンツをオンライン配信イベント「TOKYO CREATIVE CROSSING 」にて実施してきた。今年は3日間にわたる配信イベント後、 5 年ぶりにリアルの贈賞式を開催した。
本年度は応募総数2323本の中から全9部門の「総務大臣賞/ACCグランプリ」ほか各賞を決定。贈賞式当日は、各部門の審査委員長が登壇し、審査や結果について振り返るとともに、総務大臣賞/ACCグランプリとゴールドの受賞者にトロフィーと賞状が贈られた。
メディアクリエイティブ部門の総務大臣賞/ACCグランプリは、日本マクドナルド「オードリーのオールナイトマック」(媒体社:ニッポン放送、広告会社:博報堂DYメディアパートナーズ/TBWA HAKUHODO、制作会社:ロボット)。この仕事は自主プレから始まったと、TBWA HAKUHODOクリエイティブディレクター 原口亮太氏。
「オードリーの日本の東京ドームのイベントが発表された1ヶ月後、ラジオ番組の中で、若林さんが客席を埋めるためのアイデアをラジオリスナーに問いかけて募集していた。それはラジオ番組的なネタだったのだが、僕はそれを結構真に受けて、本当に何か企画したら実現できるんじゃないかなと思って、同じチームのリスナーを集めて打ち合わせをし、自主プレをさせていただいた。それをメディアクリエイティブ部門で評価していただき、うれしく思っている」
デザイン部門の総務大臣賞/ACCグランプリは、アイリスのAI搭載の咽頭内視鏡システム「nodoca(ノドカ)」が受賞。同社チーフクリエイティブディレクターを務める大八木翼氏がアイリスとの出会いから今後の展望までを語った。
「これまでクリエイティブの世界でデザインやテクノロジーを駆使しさまざまなものをつくってきたが、1年前アイリス代表の沖山翔と出会い、クリエイティビティを発揮して、どのように人の幸せに貢献していくのか。そこを本当に考えている仲間と出会えたという喜びと感動があり、その後、アイリスのチーフクリエイティブディレクターとして仕事をすることになった。人が生きるということに対して、医療という部分からさまざまなものごとをクリエイトしていく会社として、今後はよりパワーアップしていきたい。そしてアイリスで進めていることは日本のみならず、世界でも通用するものと思っている。この受賞をきっかけに、デザインというものの力を生かして、この世界を変えるための試みをより進めていきたい」
PR部門の総務大臣賞/ACCグランプリに選ばれたのは、マイナビ「座ってイイッスPROJECT」(広告会社:TBWA HAKUHODO、広告会社:ロボット)。アルバイト中の“立ちっぱなし”問題の解決を目指したもので、スタッフ専用イス「マイナビバイトチェア」を独自に開発。試験導入を経て、企業への導入が始まっている。PR部門の審査において、審査委員14名中11名がこのプロジェクトに票を入れたという。
「アルバイトの環境は、まだまだ改善すべきところはたくさんあるかなと思っている中で、こうした企画を通じて1人でも多くの働く皆様の働きやすさを体現していくことができればいいなと思っている。今回この素敵な賞をいただいて、PRをして認知してもらうことで終わるのではなく、ここから様々な企業への導入を図っていき、1人でも多くの働く方々の幸せを叶えられたら、と思っている」と、マイナビ 南波直樹氏。
ブランデッド・コミュニケーション部門は、Aカテゴリー(デジタル・エクスペリエンス)、Bカテゴリー(プロモーション/アクティベーション)、Cカテゴリー(ソーシャル・インフルーエンス)の3つの部門でそれぞれ総務大臣賞/ACCグランプリが選出されている。
Aカテゴリーの総務大臣賞/ACCグランプリは、『進撃の巨人』ワールドワイド・アフターパーティー製作委員会/MyAnimeListのTVアニメ放送完結記念『進撃の巨人』ワールドワイド・アフターパーティー(広告会社:電通/電通ライブ 制作会社:stu/VVQ/IMAGICA EEX/ポルタメント/Tachytelic)。電通 グループ・クリエイティブディレクター 高草木博純氏は「打ち上げはコンテンツではないかという発見から始まった」と話した。
「アニメだったら、スタッフやキャストや監督や原作者がみんな集まって打ち上げをするよね。そんな場を公開したら、楽しくない?そこでしか聞けない話やそこでしか見ることができないようなことがあって面白いかもしれない。さらに、それを世界中の人が見ることができたら、もっと盛り上がるんじゃないか。それが船で、みんなで思い出の船に乗って行くことになったら、さらに盛り上がるんじゃないか、みたいなことから始まったプロジェクト。なんとなくいいものとか、なんとなく悪くないねみたいなものをつくるよりも、このコンテンツが好きでものすごく愛している人が集まったときに、それにかなうだけの内容のものを作るのはすごく大変だったが、それができないと意味がないと思った。好きやいいねの先をどうつくるか。自分にとってのかけがえのないものになるかどうかを問いながらつくっていた」
Bカテゴリー(プロモーション/アクティベーション)の総務大臣賞/ACCグランプリ受賞は、BURGER KING JAPAN「バーガーキングを増やそう」(広告会社:ザ・プロデュース/DE、制作会社:アンティル/博報堂アイ・スタジオ/太陽企画)。DE クリエイティブディレクター / アートディレクター」 岩田英也氏は、これまでの仕事を振り返って次のように語った。
「秋葉原の縦読み、下北沢店のオープン告知など、いくつかの成功体験をさせていただいたが、それ以上にたくさんの失敗もしている。成功と失敗の一つ一つの学びを武器に、バーガーキングジャパンの野村一裕社長の逆転の発想とアイデアを引き金に、この『バーガーキングを増やそう』は誕生した。広告にはアイデアバトルのような一面もあるが、それだけではなく人の人生のように何か壮大なストーリーが詰まっていて、みんなの一つ一つの思いが共鳴し合って確固たるものになるんだということを、僕はこの仕事を通して体感させていただいた」
Cカテゴリー(ソーシャル・インフルーエンス)の総務大臣賞/ACCグランプリは、味の素冷凍食品/ギョーザの「冷凍餃子フライパンチャレンジ」(広告会社:本田事務所/I&CO Tokyo、制作会社:ピラミッドフィルムクアドラ/鬼/.ma/アイトゥエフ/マテリアル)。味の素冷凍食品 マーケティング本部 戦略コミュニケーション部長 源田達章氏は、今回の受賞はチームワークにあると話した。
「弊社の餃子は発売して50年以上、永久改良をして美味しさと張り付き方に力を注いできた。今働いている仲間や協力してくれる人たちのチームワークのみならず、先人たちが残してくれた財産を含めた、全体のチームワークでこの賞がいただけたのではないかと考えている。そして3520個のフライパンを送っていただいた生活者の皆様、そのフライパン一つ一つを見て、お手紙を読んで、そこに込められた思いを感じた。これからも、こうしたチームワークを大事に、生活者の皆様、さらにはいろんな方とのコミュニケーションを通じて、多くの人に少しでも笑顔になっていただけるような仕事ができればと思っている」
マーケティング・エフェクティブネス部門の総務大臣賞/ACCグランプリに選ばれたは、トリドールホールディングスの「丸亀シェイクうどん」市場創造(広告会社:博報堂、制作会社:TYO)。この取り組みはコロナ禍に始まったと、丸亀製麺 代表取締役社長 山口寛氏。
「厳しい期間に、テイクアウトやうどん弁当を始めたり、本当にたくさんのチャレンジを続けてきた。そしてドライブスルーの店舗のために作ったシェイクうどんを全国で販売する計画が進んだが、当初はこんなものが売れるわけないと厳しい声をいただいた。しかし、この販売をきっかけに若年層やこれまで丸亀製麺を訪れたことがなかったお客様にたくさん来ていただけたことは本当に嬉しく思っている。これからも日本を元気にできるような、外食をもっともっと明るくできるようなチャレンジを進めていきたいと考えている」
ラジオ&オーディオ広告部門のAカテゴリー(ラジオCM)の総務大臣賞/ACCグランプリは、タマノイ酢/すしのこのラジオCM「OTOMORE」(広告会社:CHERRY 、制作会社:ヒッツコーポレーション)。企画を手がけたCHERRY クリエイティブディレクター 原田堅介氏は、ロングセラー商品である「すしのこ」だが、若い世代に食べてもらう機会が減っていることから、このプロジェクトがスターとしたという。
「Z世代がラジオや音声メディアとの距離が近くなっているというデータから、ラジオでいろんなチャレンジをしてみることになった。当初、社長と話したのは面白いだけじゃなく、ちゃんと売れるもので、食べてみたくなる、商品を手にとってみたくなるCMをつくろう、ということだった。このCMは、チームみんなで腹を抱えて笑いながら作ったもの。みんなで楽しみながら笑顔で作ったものは、やっぱすごいパワーを持つんだということを改めて実感させてもらった」
フィルム部門 Aカテゴリー(テレビCM)の総務大臣賞/ACCグランプリは、大塚製薬/カロリーメイト「光も影も」(広告会社:博報堂/catch/ENOAD、制作会社:AOI Pro.)。2012年から続いているカロリーメイトの受験生応援CMの10作目となる。大塚製薬 常務執行役員 ニュートラシューティカルズ事業部長補佐 佐藤真至氏は、次のように話した。
「受験の応援としてカロリーメイトを冬の風物詩にしたいという提案後、10年の間にコミュニケーション積み重ね、目標に向かって頑張る人を応援するというカロリーメイトを象徴するシリーズになっている。結果、受験生だけではなく、多くの生活者の方からも共感の声をいただいている。カロリーメイトは発売して40年になるが、商品ライフサイクルを超えて未だに成長をしているとことは、本当に皆様のおかげと思っている。今後もカロリーメイトの受験の応援が冬の風物詩として継続できるよう、チームの皆さんと一緒にチャレンジしていきたい」
フィルム部門Bカテゴリー(Online Film)の総務大臣賞/ACCグランプリは、日本マクドナルド/夜マック「特別じゃない、しあわせな時間。親子」篇他(広告会社:電通、制作会社:ギークピクチュアズ)。企画を手がけたプランナー 花田礼氏が登壇した。
「この仕事はテレビCMとは別の、SNSに投稿する縦型の動画をという依頼から始まった。当時、マクドナルドさんのデジタル施策はまだこれからという状況だったので、まさかこんなことにつながるとは思いもよらなかった。
そのときに提案したのは5案。他の案は企画書をつくりこんでいたけれど、この企画はわずか2ページ程度だった。僕が好きなイラストレーターの浦浦浦ちゃんのイラストに音楽を付けたデモを見たCDの佐々木宏さんに『これだね』と言われ、提案させていただいた。公開すると予想以上の反響があり、こうした賞もいただくことができた。今回の仕事でチャンスというのはチャンスという顔をせずにやってくるんだということをあらためて思った」
クリエイティブイノベーション部門は、総務大臣賞/ACCグランプリはデザイン部門に続き、アイリスの進化し続けるAI医療機器「nodoca(ノドカ)」。アイリス取締役 福田敦史氏は、今後の展望について話した。
「nodocaは現在の診断の補助として活用されているが、実は喉を診ることで感染症だけではなく、とても多くの体の情報がわかる。今後は他の疾患へと広げていきながら、多くの人に参加してもらうことでAIにさまざまな情報を学習させて、みんなで医療をつくっていく。そういう世界を目指していきたいと考えている」
最後に阿達雅志 総務副大臣が登壇し、各グランプリ受賞者に総務大臣賞を授与した。
一部の入賞作品については、12月26日(木)17時までの期間限定で、作品に関連する映像や音声等を公開している。また入賞作品を収めた『ACC 日本のクリエイティビティ2024』は、2025年3月に発売を予定している。