Cookieの利用に対するユーザーの不満
近年、個人情報の保護を目的に、世界中でデータの取り扱いに対する法整備が進んでいる。それに伴って各ブラウザによるCookieの利用規制も進み、企業がマーケティングに必要とするデータを取得しにくくなるといったことも起こっている。
アユダンテ GMPコンサルティング事業部 シニアソリューションコンサルタント 中村 晃 氏
米調査会社ピュー・リサーチ・センターの調査によると、72%のユーザーが「オンラインサービスを利用している際に、自分たちの行動を監視されていると感じる」と回答し、80%のユーザーが「個人情報を企業に提供することによって得られるメリットよりも、何かしらの潜在的なリスクの方が大きいと感じる」と回答したという結果が得られた。また、企業に提供したくないデータや使ってほしくないデータがあっても、ユーザー側でそれをコントロールできないといったことに対して、不満を感じているという声も上がっている。
データの計測ができなくなれば、マーケティング活動は限定的となり、ユーザーとの信頼関係の構築やブランド価値の向上につなげることも難しくなる。そうした状況に対して、「企業は何らかの対策をする必要があると思っています」と中村氏は警告する。
Cookieの利用制限がもたらす4つの影響
現状、Cookieの制限状況は、ブラウザによって異なっている。
Apple Safariでは、サードパーティCookieは即座に削除。これによって、特定のマーケティング施策はすでに継続できなくなっている。また、ファーストパーティCookieの保存期間も、以前の90日間から、JavaScriptで付与されたものは7日間、広告をクリックして付与されたものは24時間に短縮された。
Google ChromeはSafariのように厳しい規制はなく、サードパーティCookieも利用できるようになっているが、これまでにSafariの機能を追随してきている歴史があることから、いずれはそちらに倣う可能性も大いにあると考えられる。
Cookieの制限は、主に次の4つのことに影響を及ぼしている。
1つ目は、ビュースルーコンバージョン。これによって、たとえばYouTubeで動画を視聴し、そこでは特にクリックをせずに改めてWebサイトを訪問してコンバージョンしたといったユーザー行動も、計測することができていた。しかし、サードパーティCookieが削除されれば、こうした計測はできなくなる。
2つ目は、一度自社のWebサイトを訪問したユーザーに対して、もう一度アプローチするリマーケティングだ。これは、サードパーティCookieから得られる、性別や年齢などのユーザー属性やユーザーの趣味嗜好といった情報をもとにして行われる施策だが、サードパーティCookieが制限されて得られる情報が減少すれば、リマーケティングの対象となる範囲も縮小する。そうなれば、必然的に成果もシュリンクしていく。
3つ目は、自動入札。サードパーティCookieのデータを使って広告の表示回数や入札の金額などを決めていることから、こちらもサードパーティCookieの制限によって対象となる範囲が縮小すれば、成果もシュリンクする。
4つ目は、広告をクリックしてサイトを訪問し、コンバージョンしたユーザーを計測するクリックスルーコンバージョンだ。これはファーストパーティCookieを活用して計測しているため、ファーストパーティCookieの保存期間が90日間であるChromeでは、以前と変わらず計測ができる。対してSafariは、広告をクリックして付与されたファーストパーティCookieの保存期間が24時間に短縮されたため、広告のクリックからコンバージョンまでが24時間以内に行われなければ、成果としてカウントされない。それゆえに、本来の成果よりも少なく見えてしまうといったことが起きている。
機械学習でプライバシー保護とデータ計測を両立
こうした昨今の状況に対して、Googleはいくつかのソリューションを提供している。講演では、その中から「Cookie同意バナー」と「Google同意モード」について紹介した。それによって、プライバシーの保護と同時にマーケティング成果の評価の実現も目指せるようになるという。
「Cookie同意バナー」は、Cookieの利用に同意するかどうかをユーザーに選択してもらい、同意情報を管理する役割を持っている。同意バナーは大きく3種類に分けられ、「これ以上サイトを利用するのであれば、Cookieの利用に同意したとみなす」という選択肢のないもの、Cookieの利用に同意するかどうかが選択できるもの、CookieごとやCookieの利用目的ごとに同意するかどうかを細かく設定できるものがある。
「Cookieの利用をユーザー自身で目的ごとに細かく設定できるようにすると、ユーザーは何かしらのメリットが受けられるのではないかという期待をもって、部分的にでもCookieの利用を許可することが十分にあり得ます。複雑な管理や計測が発生するとは思いますが、それだけで許諾率が上がり、計測の幅も広がるのではと思っています」と中村は言う。
「Google同意モード」は、「Cookie同意バナー」で得た情報をGoogleのプラットフォームに伝え、データ計測の制御を行う。それに加えて、同意を拒否したユーザーを、同意をしたユーザー情報を用いて保管するモデリング集計という機能を有する。
同意モードにはシンプルなものと高度なものがあり、シンプルな同意モードはユーザーが同意するまで計測をしない仕組みになっている。そのため、モデリングもシンプルなものとなり、補完できるデータも限定的になる。一方、高度な同意モードは、ユーザーの同意が得られなかった場合にもユーザーを識別できない状態でデータを計測し、そのデータをもとに機械学習で情報を補完。通常であれば、1人のユーザーがアクセスしていても別のユーザーだと認識されるところを、同じユーザーがアクセスしているという情報を機械学習で補うといったことが可能になる。
最後に中村氏は、「実際にGoogle同意モードを導入している欧州の企業では、Cookie利用に同意しなかったユーザーのうち、広告経由でコンバージョンした数を平均で65%程度復元できています」と得られる成果の大きさを述べた。
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