アメリカ年末商戦2024 キーワードは「ノスタルジー」「高級志向」「コ・マーケティング」など

ハロウィーンが終わり、アメリカではブラックフライデーからクリスマスにかけて、1カ月の年末商戦が始まっている。コロナ前まで支出が戻ると予測されている中、各小売企業のマーケティングの方針はどのようなものになっているのだろうか。現地のマーケティングトレンドを、松本泰輔氏が解説する。
 
※本記事は月刊『宣伝会議』1月号の連載「米国広告マーケティング事情」に掲載されています。

松本泰輔氏

Coast to Coast Marketing Services 代表。AEとして約10年広告代理店に勤務後、1995年渡米。大学院卒業後、ニューヨークの広告代理店にて通信・金融・食品会社などを担当し、2005年独立。アメリカ東海岸を拠点にマーケティング、ジャーナリズム分野にて幅広く活動。2011年、宣伝会議より『フェイスブックインパクト』を共著にて発表。

ブラックフライデーからの約1カ月 支出はコロナ前まで戻る見通し

全米小売業協会(NRF)は2024年の年末支出について「前年対比2.5~3.5%増の9800億~9900億ドル(152~154兆円)とパンデミック以前の数字に戻るだろう」と予測。ブラックフライデーからクリスマスまでの約1カ月が年末商戦となるが、長引くインフレと将来への不安から「消費者は価値のあるものを求めている」という予測も出ている。今回は、各小売業界の年末商戦の戦略について、紹介していく。

ウォルマートはZ世代をねらい90年代ノスタルジーCMを放送

複数のリサーチ団体が「Z世代は1990年代のポップカルチャーを愛している」という示唆を出している。実際に当時のカルチャーを覚えているわけではない1997~2012年生まれのZ世代の多くが「1990年代の音楽・ファッション・ドラマなどに癒やされるので、現実逃避のためにそれらを消費している」と回答している。

そんな「1990年代ノスタルジー」をテーマにして制作されたのがウォルマートの年末ギフトCMだ。クリスマスギフトが配送されてくるシーンから始まるCMの本編では、「ザ・シンプソンズ」「ギルモア・ガールズ」などの1990~2000年代にかけてヒットしたアニメやドラマのクリスマスエピソードの名シーンがちりばめられており、それぞれのシーンが旧き良き時代を彷彿とさせた。

本CMの企画意図について、ウォルマート社制作担当副社長デイビッド・ハートマン氏は「消費者と感情的なつながりを持つことを意識し、その方法を常に模索している」と説明している。

90年代の懐かしのヒット番組が登場するウォルマートのCM。最大のターゲットであるZ世代へ向けてノスタルジックなメッセージを送る。

アーバン・アウトフィッターズは懐かしのキャラクターを起用

Z世代を狙うのはウォルマートだけではない。若者に人気のアーバン・アウトフィッターズはミッフィー、モンチッチ、キューピーなど、Z世代が好むキャラクターを起用したビデオでキャンペーン“Happy LOLidays”を展開している。人気TikTokクリエイター、Lubalinがつくった歌「UO Carol」に合わせてキャラクターが踊る動画が公開されると「ミッフィーのぬいぐるみがほしい」などのコメントが投稿され、賑わっている。「Z世代が好きなトレンドやカルチャーを取り入れ、混み合うメディアのなかでメッセージを届けたい」とアーバン・アウトフィッター社のマーケティング部長シンティア・レオ氏は述べている。

90年代のキャラクターが登場するアーバン・アウトフィッターズの30秒動画。マスメディアへの出稿を抑え、SNSだけで最大限の効果を狙う。

 
 
…この続きは11月29日発売の月刊『宣伝会議』1月号で読むことができます。

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