左から)TAKI CORPORATION IGI アートディレクター・デザイナー 米山浩太郎氏、JAMSTEC 海洋科学技術戦略部 海洋STEAM推進課 課長 市原盛雄氏、TAKI CORPORATION IGI 部長・アートディレクター 大入将太郎氏
存在意義を自ら見出せない限り世の中には伝わらない
―「IGI」の事業内容とお二人の担当領域を教えてください。
大入:「IGI」はたきコーポレーションの組織変更に伴って2023年に誕生した、ブランディング専門のカンパニーです。パーパスの策定からCI/VI開発、そしてそれを浸透させるためのWebサイトや動画、グラフィックなどのクリエイティブまでを一気通貫で手掛けられる体制に特長があります。その中で、私たちが所属するのはVIとクリエイティブ制作の部門。私がクリエイティブディレクション、米山がアートディレクションを担っています。
―JAMSTEC側は、ブランディングについてどのような課題を持ち、取り組みを進めてきたのでしょうか。
市原:JAMSTECとは一言で言うと「海と地球の研究所」。文部科学省の所管で気候変動や海底資源、地震に関する研究など、海洋に関する総合的な研究開発を行っています。国の機関である以上、私たちの取り組みは国民の皆さんに理解していただく必要があります。本来は気候や食など、人々の生活に密接に関わっているはずの「海」なのですが、身近さや大切さは十分知られていないのが実情で、そこに課題を感じていました。
2021年にJAMSTECが50周年を迎えるにあたって当時、広報課でリブランディング担当だった私はあらためて情報発信をする必要があると考えました。しかし、そもそもブランディングとは何か、何のためにやるのかも分からない状況。そこで宣伝会議の「コーポレートブランディングカンファレンス」に参加。その場でたきコーポレーションさんと出会ったのがきっかけです。
たきコーポレーションさんとの対話を通じ、JAMSTECが存在する意義を私たち自身が見いだせない限り、クリエイティブの工夫のみでは、国民にうまく伝わらないのだと理解しました。最終的にIGIさんに依頼したのは、ブランディングを柱として、周年ロゴやスローガン、Webサイトなどの解決策を幅広いネットワークの中で示してくれたことが決め手でした。
大入:JAMSTECさんとの仕事で最初に制作したのは50周年のロゴとコンセプトムービーでした。ここで周年スローガンとして掲げたのが「Sailing for the Earth, Diving for Science & Technology」。それ以降全てのアウトプットがこの言葉に基づいています。
市原:周年事業のメンバーは部署横断の10名ほど。「50年後の私たちはこうありたい」という観点に基づいて、ディスカッションを重ねました。
―「IGI」のCI/VI開発プロセスについてお聞かせください。
米山:私たちが何より大切にしているのは、お客さまを徹底的に理解することです。いきなり制作を始めるのではなく、経営層も含む社員の皆さん、時にはステークホルダーの皆さんの思いを紐解いて、ブランドパーソナリティやロゴの元になるキーワードを言語化していきます。また、こうしたアウトプットに至るまでのプロセスが情報として整理・可視化されていることで、お客さまの組織内での意思決定もスムーズに行うことができるのも特長です。
今回の海洋STEAM教育プロジェクトでは、学校向けの取り組み「海洋STEAM教材ライブラリー」の特設サイトとプロジェクトのロゴ開発を担当しました【画像】。先述の事業理解に加え、大切にしたのはこれまでJAMSTECさんが行ってきたアウトプットを理解すること。“JAMSTECっぽくないね”とならない、トーン&マナーを意識しています。
市原:私たちの組織は漢字で書くと「国立研究開発法人海洋研究開発機構」で、非常に堅いイメージです(笑)。
これまでも調査船等の一般公開など、モノを基点とした紹介活動は行ってきましたが、これに加えて多岐にわたる事業や研究内容を十分に理解してもらうことがさらに重要になってくると考えました。サイトやロゴでは、IGIさんのもつ、物事をやわらかく伝える技術をうまく融合できたと思っています。
プロジェクトの詳細はこちらより。「主な対象は教職員ですが、興味を持った生徒が直接アクセスすることもあります。大人向け、子ども向けとなりすぎないようなニュートラルなデザインを大切にしています」(米山氏)。
―今後の展望をお聞かせください。
市原:いま取り組んでいる海洋STEAM教育のプロジェクトは、次世代の子供たちが不確実性の高い実社会を生き抜いていくための力を育む、数十年先を見据えた活動と考えます。研究開発はもちろんのこと、そうした人材が持続的に育成されるような戦略を考えることも私たちの役割だと思います。そしてこの中から、次世代の海洋分野に携わる人材が出てきてくれたらと願っています。
IGIさんと取り組む中で、大きなプロジェクトを、理念を持って推進していくには、パーパスに基づくブランディングを軸に事業を正しく理解してもらうことが不可欠であると実感しました。今後も様々な場面で連携していけたらと思っています。
米山:実は個人的に海や生物に興味があって、大入がJAMSTECさんの周年事業を進めていたことを知り、ぜひやりたいと今回の海洋STEAM教育プロジェクトから加わったんです。今後も地球の未来に関わる研究を日々行っていることを、もっと広く、解像度高く知ってもらうためのお手伝いをしていきたいです。
市原:それを聞いて私も嬉しかったです。これからもワクワクして心が揺さぶられるようなコンテンツを一緒につくっていけるのではないかと思っています。
大入:ただ「かっこよく見せる」だけでなく、どのような発信をしたら海に興味を持つ人を一人でも多く、生み出せるのか。そして、世の中をワクワクさせれるのか。JAMSTECの皆さん自身が、そうした意思を持って私たちを受け入れてくれているのも非常に大きかったです。
IGIはパーパスとして「今より明るい未来を人と企業とともにデザインする」を掲げています。今後もJAMSTECさんはじめ、社会課題を解決するための活動を、ブランディングの力でサポートしていきたいと思っています。
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