大広の大政剛氏とコレクシアの村山幹朗氏が11月28日、29日に開かれた「宣伝会議サミット2024」に登壇し、「ブランド成長の新戦略!新たな視点で“未顧客”の心を掴む方法とは?」と題して対談を行った。
「既存顧客の維持」と「新しい顧客の獲得」の両立に苦慮するロングセラーブランド。再び成長を遂げる鍵は「CEP(カテゴリーエントリーポイント)」にあるという新たなアプローチを紹介した。
ターゲティングの軸を属性から文脈へ
大政:ロングセラーブランドには様々な悩みがあります。「売り上げが伸び悩み、ブランドの若返りを図りたい」「商品をリニューアルしたら、既存顧客に嫌われそうで踏み出せない」「環境が変わり、これまでと違う軸で訴求していきたい」など。こうしたブランドの成長には既存顧客の維持だけではなく、新規顧客=未顧客の獲得も必須となります。その一方で、未顧客はアクションを起こしていないためデータもなく、打ち手を考えることができないという課題もあります。
大広 ビジネスデザイン統括局 エグゼクティブプロデューサー 大政 剛 氏
その際に必要なのがターゲティングの視点を変えること。未顧客に対し、人(属性)ではなく、気持ち・オケージョン(文脈)を狙うという方法です。例えば「40代/女性/既婚/子あり/横浜在住」といった属性ではなく、「体を動かしたい」「推し活に夢中」など、ターゲットが抱く気持ちやニーズで括ります。こうしたブランド想起の入り口となるのが、CEPであり、ブランドが成長するための鍵となるものです。
村山:CEPとは、日常生活とカテゴリーやブランドを結びつける「記憶」のこと。購買の選択肢を考え出すきっかけとなる記憶や手がかりになります。例えば、スポーツドリンクは「運動中の水分補給」といった状況と強く結びついていますが、そのなかでも、「スポーツする時にはアクエリアス」「風邪を引いて熱が出た時にはポカリ」「熱中症を予防する際にはグリーンダ・カ・ラ」のように、一つのカテゴリーでも時と場合における様々な入り口が潜んでいます。
このCEPには、大きく3つの付随する特徴があります。まずひとつ目が、成長するブランドはCEPが増えることで成長しているということ。大きいブランドは、いろいろな文脈で連想されるのに対し、小さなブランドは入り口の数がかなり少ないという状況があります。実際に、売上やシェアが落ちる時は、離反が増えるのではなく、入り口が少ないことでライトユーザーの獲得が減り、ブランドが衰退するといった現象も確認されています。
コレクシア 代表取締役 村山幹朗 氏
二つ目は、未顧客ほど、CEPで最初に連想した商品を選ぶ傾向があること。カテゴリーに詳しくなく、また深い関心もないからこそ、同じブランドをリピートし続けているのです。そうしたカテゴリーに興味の薄い人たちを獲得するには、いかに彼らの日常の文脈で思いついてもらうかが勝負になります。ヘビーユーザーと言われる顧客も、1年で半分は入れ替わるため、未顧客を獲得するための入り口を日常の文脈のなかにつくることが重要なのです。
最後が、1つのブランドでいくつものCEPを持つことができるということ。コカ・コーラを例にとってみましょう。ハンバーガーを食べる時、ピザを食べる時、クリスマスの食事の際……など様々な場面で連想されるように、ブランドの入り口は複数持つことができるのです。また、CEPはブランドが本来持っている意味や価値に関係なくつくることができます。
シェアの大きいブランドは多様なCEPを持つ
村山:ここで、「アイスクリーム」をテーマに実施したCEPブランド調査についてご紹介します。全国の20~60代の男女に、「どんなシーンで、どのブランドを連想するか」を聴取したところ、いくつかの事実が見えてきました。
まずCEPの基本的な性質として、市場シェアが大きいブランドは多様なCEPを持っています。つまり、他のブランドよりも連想されやすい状態をつくれているのです。実際に最もシェアの高いハーゲンダッツは、「食事の後にデザートを食べる時」「少しの贅沢でささやかな楽しみを実感する時」など、様々な文脈で連想されています。
そしてCEPのなかでも、ボリュームの大きい購買機会でポジショニングを取ることが重要です。そうすることで、より多く自社のブランドを連想させるだけでなく、より長くシェアを維持していくことも可能となります。
一方、シェアの低いブランドはやはりCEPで優位に立てていないことが明らかになりました。特に市場規模が大きいCEPとの結びつきが弱いと、シェアも伸びにくい傾向が見られます。
ここで興味深いのが、他の競合よりも抜きんでて多くCEPとの結びつきがつくれているブランドは、一定のシェアを獲得できているという点です。例えば、ガリガリ君は「暑い日に暑さを紛らわせようとする時」というCEPで圧倒的な存在感を示しています。このように、まだ開拓の余地があるCEPを見つけることで、新たなマーケティング戦略を立てることができるのです。
CEP調査から探る新たなブランド戦略
大政:現在、大広とコレクシアで、CEP専門の「ブランドデザインチーム」を立ち上げ、CEPを活用したマーケティング戦略を行っています。今回は、その事例の一つである、とあるインクジェットプリンターの取り組みについてご紹介します。
前提として、インクジェットプリンター市場はすでに成熟し、コモディティ化が進んでいます。加えてキヤノンとエプソンの2大ブランドが市場の大部分を占めています。そのなかで、特にビジネス用途での購入が多い対象ブランドを、どのようにポジショニングしていくのかがポイントになりました。
CEPブランド調査を行った結果、顧客がプリンターを選ぶ際の選択基準は、「起動が早く、補充が簡単、丈夫でシンプルな操作」であることが分かりました。また現状の戦略に関わるCEPである「資料の文字が見やすいように印刷したい」というニーズも、上位に位置づけされていることが明らかに。このなかで注目したのが、2社との差分が小さい「資料をスキャンして紙でなく電子化して整理したい」というCEPでした。この観点から、デジタル化による書類やドキュメントの「整理保管」文脈に着目しました。
そうして従来の顧客の選択基準である「使い勝手がよい」という文脈に、ビジネス用途を意識したCEPで注目の文脈として、「文字印刷に強い」文脈と「電子化して整理保管」文脈を組み合わせることで、新しい顧客価値を生み出せるのではという仮説を立てました。
このようなCEP活用のマーケティング戦略の可能性に興味をお持ちの企業様は、ぜひ一度私たちにご相談ください。
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ソリューションデザイン統括局
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