熱愛報道の4文字がXでトレンド入りするたび、ヒヤッとする。
自分の推しの熱愛でないことを把握して、どこかで安堵してしまう。同時に、今まさにどこかでオタクが絶望の最中にいることを想像しては勝手に哀悼する。自分に重ねて悶絶する。土足で踏み込むメディアに憤慨する。今この瞬間にもひとつ、ふたつと見知らぬ誰かが星になる。君の推した時間は無駄じゃない、なんて軽はずみには言えない。
熱愛報道は死活問題
数年前、写真越しに推しの『右手薬指の指輪』を見つけた筆者は捻った蛇口の如く泣いた。筆者は本気で推しと結婚したかった。ガチの恋だった。
翌朝、推しに関する一切を断ち、筆者は海辺にいた。いつもなら推しのいる現場で推しにクソデカカメラを向けていただろうに。
泣きながらしらす丼を食べた。ビールをがぶ飲みした。めちゃめちゃ美味しかった。哀しい時も美味しいものはちゃんと美味しくて、悔しかった。
東京ドームでのコンサートに集う人々(筆者撮影)
卒業。撤退。担降り。ペン卒。他界。
いずれも「推し活をやめること」を意味することばだ。アイドルや俳優、ゲームなど分野に応じて異なる形で呼ばれている。
「担降り」は、旧ジャニーズファンの間(界隈)で発生したという。自らを「(タレント名)担当」、略して「〇〇担」と呼び、その役目を「降りる」ということだ。韓国アイドル等のファンをやめる「ペン卒」のペンとは韓国語でファンを指す。「他界」はその界隈から脱することだろう。
しかしなぜ人は、楽しかったはずの推し活をやめてしまうのか。
推し活「きれいなものじゃない」
「最近メディアで取り上げられる推し活には、『楽しい趣味』『推しがいる人は輝いてる』という決めつけを感じるんです。推し活なんて、そんなきれいなものじゃないのに」
ある推し活をやめた経験者はそう語る。現に推し活経験者の半数以上が推し活の“しんどさ”を経験したことがあるという。
筆者が2023年10月~11月にオンラインで独自に実施した「担降り/ファンをやめることに関するアンケート」の円グラフ。「現在または過去に推し活を経験したことのある」と回答した230人の結果(有効回答数)。後述する調査結果も同アンケート結果に基づく。