兵庫県伊丹市の魅力や、自治体職員としてのキャリアなどについて、高校生を対象にした授業を実施している伊丹市広報・シティプロモーション課の中田由起子氏。授業後、どのような変化が表れているのか。
※本稿は、広報会議2025年2月号の連載「地域活性のプロが指南」(文/中田由起子氏)をダイジェストでお届けします。
シティプロモーションの効果
2016年に私がシティプロモーション担当になってから8年が経ちます。新規事業として始まった伊丹市のシティプロモーションは、①「官民連携」②「伊丹大使」③「まちへの愛着」の取り組みをはじめ、様々な媒体や手法を活用しながら、たくさんの市民や民間事業者、行政職員等と一緒に、「人口の減少率を鈍化させる」ことの一役を担ってきました。
関連記事
本市の人口は、シティプロモーションを開始した2016年から微増し続けたのち、2019年をピークに減少し始めていますが、全国と比べるとその減少率は鈍化傾向にあり、それこそが最大の効果であったと考えています。
今後も市の方針に基づいたシティプロモーションを通じて、この数年間で信頼関係を構築してきた市民の皆さんや民間事業者等と連携し「まちの魅力」を発信し続け、人口減少という課題に挑んでいくことに変わりはありません。
次なるフェーズへ
シティプロモーションは、メインターゲットを、引っ越し検討時期の20~30代の子育て層とし、サブターゲットを、今後引っ越しを検討する可能性のある潜在層として、市民の皆さんや民間事業者等と一緒に推進することで「まちへの愛着」へとつなげてきました。
そして、ここ数年はそこにプラスアルファとして、次世代であるさらに若い層の方たちに「伊丹のまちの魅力」を発信することに取り組んでいます。
具体的には、「伊丹市のシティプロモーション」について市内外の高校生を対象とした授業をすることで「伊丹のまちの魅力紹介」や「伊丹へ来訪するきっかけづくり」につなげる取り組みです。
高校での授業風景。筆者による授業を受けた生徒たちからは「伊丹市にこんないい所がたくさんあるなんて知らなかった」といった声が届いている。
きっかけは、ある高校の先生からのオファーだったのですが、高校生への授業では、シティプロモーションの目的や手法、効果と併せて、私が自治体職員を目指すことになった経緯や、仕事と大学の両立、仕事と子育ての両立等のキャリアデザインについて話しています。この授業を通じて、私が伝えたいことは2つあります。
1つ目は、若年層向けのシティプロモーションとして「伊丹のまちの魅力発信」を直接行うこと。コロナ禍以降、情報発信の媒体や手法は増加し、エンターテインメントを含め情報過多の中、若年層に「まちの魅力」を知ってもらうこと、さらに興味関心を持ってもらうことはとても難しいと考えています。
そのような現状を踏まえ、授業の中で、年間300~500人の市内外の生徒に「伊丹のまちの魅力」を直接伝えるとともに、フィールドワークで本市に実際に来訪してもらったり、グループワークで「高校生・大学生世代に伊丹の魅力(観光スポットやイベント等)をどのように紹介するか」を直接投げかけたりするなど、生徒たち自ら考えてもらう機会を設けています。
その成果もあり、授業後、生徒たちが「伊丹市にこんないい所がたくさんあるなんて知らなかった」「来てよかった」「もっとPRしたらいいのに」という嬉しい声を聞くようになりました。
若年層から少しずつ「伊丹の魅力を知ってもらう」「伊丹のまちへ来てもらう」きっかけづくりとしての取り組みになってきています。
2つ目は「自治体職員の仕事」を知ってもらうこと。私自身、阪神・淡路大震災で被災した時に出会った伊丹市職員の姿を見て、自分の進路を大きく変えました。普段関わることのない「自治体職員」の話を直接聞くことで、将来の進路の選択肢として「自治体職員」を入れてもらえるのではないかと考えています。
単なる就職先の1つとして「自治体職員」を選ぶ人も多いと思います。しかし、市民の皆さんと一緒にまちをつくったり、協働でまちの魅力を発信したり、時には意見の相違でぶつかったりしながらも、そんな皆さんと一緒に歳を重ねていくことはとても魅力的だと私は感じています。
まだ試験的ですが、この夏に初めて、市外の私立高校生がイベント「イタミ朝マルシェ」に来て「イベントの魅力をSNSで紹介する」というフィールドワークを実施しました。このイベントは、伊丹在住の市民や飲食店たちが長年かけてつくり上げてきた大切なイベントで、かつて、私が中心市街地活性化担当だった時に知り合った方たちのイベントです。
授業後の生徒からの振り返りで、「中田さんが色々な方々に挨拶をして楽しそうにお話をされているのを見て、自治体の皆さんと地域の皆さんが協力して活動しているからこその関係なんだなと思いました」とあり、このように直接来て、見て、感じてもらうことにより、私が一番伝えたいことが生徒に伝わっていると再認識したところです。
イタミ朝マルシェの様子。市外の高校生にマルシェに来てもらい、その魅力をSNSで紹介するフィールドワークを授業の一環で実施した。
全文は、広報会議2025年2月号 連載「地域活性のプロが指南」でご覧ください。
本連載のバックナンバーは「広報会議」デジタルマガジンでお読みいただけます。
【バックナンバー】