ブランドを効果的に伝え、顧客への定着を図るプロモーション戦略とは?

どのように顧客とタッチポイントを作り、どのようにコミュニケーションを設計していくかは、マーケティング担当者が抱える課題の一つだろう。
本記事は2024年12月に開催された「宣伝会議リージョナルサミット2024冬 in 福岡」から、注目セミナーをレポート。シャボン玉石けんの松永 康志氏はファン育成やライトユーザー層へのブランド価値の伝え方を、インテージの浅野 陽介氏、ドコモの中村 洋平氏は変わる生活者意識と変わるメーカー販促について紹介した。

企業理念を貫くことでブランディングを確立

北九州市に本社を置くシャボン玉石けんは2024年に創業114年を迎えるが、合成洗剤をやめて無添加せっけんに切り替えてから50周年を迎える。合成洗剤が主流だった1974年、国鉄から「合成洗剤で機関車を洗うとサビが出る。天然油脂で作る無添加のせっけんで試してみたい」と依頼を受け、開発。その際、長年悩まされた湿疹の原因が合成洗剤にあることを知った2代目光德は、無添加せっけんへ切り替える事を決断。「人と環境にいいものを作る」という思いで作り続け、ベストセラー商品に。

写真 セミナーの様子

松永氏は「私たちの事業は当時から変わっていないが、企業理念に則り取り組み続けることがブランディングにつながっているのだと思います」と話す。

社会的活動を通して、顧客との接点を作る

「無添加せっけんを使うことで機能的、社会的、情緒的にどのようなベネフィットがあるかを伝えるブランディング活動に取り組んでいます」と松永氏。そのため「無添加せっけん」はロングセラー商品だが、一般消費財だけでなく、医療施設やコインランドリーへの導入、ノベルティ事業や石けん系消火剤の開発などさまざまな接点を作り、これまでに利用したことのないユーザーが体験できるように試みている。

例えば、医療施設で使用されたハンドソープボトルを回収し新しいボトルをつくる水平リサイクルの推進、専門家監修による「手洗いうた」の制作や地元テレビ局との「手洗いダンス」共同企画、香害や化学物質過敏症の啓発を目的とした新聞広告、ドキュメンタリー映画の制作などが挙げられる。

また、製造のこだわりを伝える工場見学や出張授業も実施。コロナ禍では、若手の社員が自ら手を挙げ、オンライン工場見学を開催し、年間1万人近くご参加いただいた。松永氏は「自分たちで主体性を持って取り組むということに仕事へのウキウキ・わくわく感が生まれ、社員のやりがいやウェルビーイングにもつながり、生産性が高まり、成果もでやすくなるのでは」と話す。

写真 シャボン玉石けんの松永康志氏

そのほか、「1% for Natureプロジェクト」で売上の1%をNPO団体に寄付。シャボン玉石けん社の商品を選ぶことが、間接的に社会貢献につながる仕組みにしている。イオン九州と協働したSDGs売り場展開、能登半島地震における被災地支援、福岡県宗像市と産学官連携の実証実験などを例に挙げ、「自社だけでできることは限られるため、協業することが大事です」と松永氏は強調した。

新規顧客の獲得、ファン育成のために

商品の購入回数をID-POSで調べてみると、当社商品はリピーターが多い。一方、1・2回の顧客が多いことが判明。そこで新規顧客の獲得、ファン育成のために接点作りや売り場作りに限らず、TVCMや新聞広告、ネット広告、ラッピングバスや羽田空港などの交通広告などを展開した。最近は小売様のリテールメディアも活用をしている。松永氏は「交通広告で新規顧客を獲得できるとは思っていない。既存のユーザー層に向けて『わたしたちが選択している商品は正しい、これからも応援しよう』と思っていただけるメッセージだと思っている」と説明した。そのほか、直観で購入を決断するニューロマーケティングに則り、脳に負担をかけないわかりやすい広告や販促を展開。ファンミーティング「Our SHABON」、講演会などでファンの育成を図っているという。

最後に松永氏は「せっけんを通して子どもの笑顔や、幸せ、地球を守ることを目指します」とまとめた。

セミナーで話す松永氏の様子

シングルIDとフルファネルでマーケティング支援を実現

続いて、インテージの浅野氏、ドコモの中村氏がシングルIDとフルファネルによるマーケティング支援について説明した。インテージとドコモは2023年10月に資本業務提携を締結。

写真 人物

中村氏は「ドコモの持つ日本最大級の約1億の会員基盤と、インテージHDの持つデータ収集から集計、分析、可視化、マスター化などデータの価値を高める『データハンドリング』のノウハウを組み合わせ、メーカー、小売り流通、サービス業の企業マーケティング課題に対応した生活者起点でのマーケティング強化を目指すため」と話した。

生活者と社会環境の変化の傾向は

生活者は節約意識、物価高への対策に関心が高く、節約意識が高止まりの状況が続いている。また、長期化する値上がりに「節約疲れ」を感じる層も増加。浅野氏は「顧客体験全体の意識として、安さだけを求めた行動だけでなく、ポイントも含めたお買い物全体のお得さや無駄遣いを防ぐ計画購買など、お買い物スタイルの多様化が見える」と話す。

キャッシュレス決済の増加を中心に便利な購買環境の整備、ポイントサービスの市場拡大など購買環境は変化しているが、メーカーのマーケティング活動は新規顧客の獲得、獲得した顧客の定着化、LTV向上と変わらない。生活者一人ひとりのニーズや嗜好、購買行動の多様化、差別化が難しい時代だからこその顧客との関係強化、デジタル技術により広告販促でより高い効果が求められるようになってきているため、「『生活者中心の1to1マーケティング』や生活者データや購買データを起点とした『データドリブンマーケティング』へ変化しつつある」と浅野氏は話す。

写真 セミナーの様子

しかし、メーカーは生活者データの取得をはじめ、データを統合・分析し、施策に落とし込むノウハウがないことを課題に感じている。そこで、インテージとドコモの強みを生かして、データ起点のマーケティング活動の支援、一気通貫マーケティング活動の支援を目指す。

インテージとドコモが提供する「dマイレージ」

「dマイレージ」は、決済手段や購入店舗を限定せず、レシートとバーコードを登録するだけでお得にポイントを獲得できるサービスだ。浅野氏は「生活者に対して購買のお得さと楽しさを提供し、メーカーには新規顧客の獲得からリピート購入、定着化、購買データによる効果検証ができる」と話す。
dマイレージでは、レシートとバーコードを購買証明することで、決済手段を問わず全国の多様な流通店舗における購買を対象とした施策を実現できる。流通チェーンとの調整が不要で、メーカー主導の販促が可能となるものだ。ドコモ会員基盤を対象に新規獲得からリピート購入促進まで実現が可能となる。

写真 人物 インテージ 浅野 陽介氏

最後に「短期でなく中長期の売上の増加、LTVの向上を目的に、インテージとドコモの双方アセットを活用したデータ起点の販促に挑戦していきたい」とまとめた。

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株式会社インテージ
マーケティングソリューション本部

EMAIL:dmileage-sales@intage.com

 

株式会社NTTドコモ
マーケティングイノベーション部

EMAIL:dmileage_mi@ml.nttdocomo.com

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