※本記事は『販促会議』2025年1月号連載「シン・トップの現場力」への掲載内容から抜粋してお届けします。
日本ピザハット・コーポレーション
代表取締役社長
篠崎幸男氏
1987年、三菱商事株式会社に入社。台湾、アメリカ、ブラジルでの海外勤務、東洋ゴム工業株式会社(現TOYO TIRES)執行役員経営企画本部長、米国三菱商事会社上級副社長、三菱商事株式会社中南米地域代表兼伯国三菱商事会社社長を経て2055年10月~日本ピザハット株式会社 経営企画室長に就任。2024年10月より現職。
ピザハットを取り巻くすべての人が幸せになることを一番に願う
──社長に就いたのは2024年10月です。就任にあたって、どのような想いを持っていましたか。
社長を拝命するにあたって、一番に願っているのは皆さんが幸せになることです。ここで言う「皆さん」とは、社員はもちろん、その家族、パートナー。お客さまや株主の皆さんをはじめとしたステークホルダーなど、ピザハットに関わってくださる方々全員のことを指しています。
幸せというとかなり漠然としていますが、例えばピザハットを見たり、聞いたり、食べたり、思い出したりしたときに、「ホッとする」こと、「笑顔になる」こと、「誇らしく思う」ことも、幸せの一部だと思っています。ピザハットの経営理念でも、「私たちはピザのチカラを通じて、人々に笑顔と感動をお届けし、明るい社会の実現に貢献します」と掲げているように、やはり「幸せ」という言葉は、当社にとってのキーワード。ピザハットが愛される企業になるために、経営を推し進めていきたいという想いでした。
売るべき店舗で売るべき商品を届ける
──経営戦略についても伺います。ピザハットがこれからより成長するためには何が必要だと考えていますか。
重要になるのは、商品・価格戦略、店舗戦略、広告戦略、人材戦略の大きく4つだと考えています。その中でも現在最も重視しているのは、商品戦略と店舗戦略。売るべき場所で、売るべき商品を販売することで、確実に利益を出せる会社を目指していきます。
まず商品戦略。定番商品の改善は絶えず行っていきます。最近ですと、2024年10月から当社が提供する全ピザのモッツアレラチーズを130%増量するという施策に踏み切ったことは、その代表例です。この事例は、AIとピザ職人のノウハウを融合させて、ピザに合うチーズ量の黄金比を可視化するという取り組み。AIを使った商品開発はピザハットとして初めての試みでしたが、必要な施策だったと捉えています。
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ピザハットの強みは何と言っても熱々で届けるレストランクオリティの「おいしさ」にあります。だからこそ、商品の味にはとことんこだわっていかなければならない。原価が高騰する中でチーズの増量に踏み切れたのも、その想いがあるからです。
その他、商品戦略の一環として進めているのが、展開商品の見直しです。2024年11月から、売れ行きが思わしくなかったり、利益率が低い商品は意図的に絞っています。もちろん各商品のファンのことを考えると苦渋の決断ではありましたが、原料のフードロスにも繋がってしまうのがこれらの商品。当社としては見逃すわけにいきません。「売るべき商品をきちんと売る」。まずはこれを徹底していく方針です。この見直しをさらなるおいしいピザの開発に繋げ、より良いピザ体験の提供に寄与できるように、努めていきます。
──店舗戦略も重要な柱に挙げています。
先ほど述べたように、これからピザハットが企業として目指していくのは利益を出せることです。もちろん売上をどんどん伸ばしていくことも大切ですが、同時に、さまざまなコストに見合った運営を行っていく必要があります。
そこで欠かせない役割を担うのが店舗戦略です。出店場所の検討、店舗数の拡大といった観点だけではなく、店舗の形態も新しく追加し、運営すべき店舗スタイルで営業できることを目指していきます。
新たに追加を予定している店舗スタイルは、3つ。具体的には「BOPIS型店舗」「スモールボックス化」「ショッピングセンターへの出店」です。
とくにBOPISは直近で最も力を入れている形態ですね。そもそもBOPISとは、Buy Online Pick-up In Storeの頭文字をとった言葉です。つまり「店舗受取」のみで商品を提供する店舗のことを指します。ピザハットは“宅配”ピザチェーンと呼ばれてきましたが、“宅配”を行わないタイプの店舗を11月18日オープンしました。場所は大阪の天神橋筋商店街です。
これまでピザハットが展開してきた店舗の形態は主に1種類。宅配バイクはもちろん、展開する全商品を調理できるフル仕様の店舗のみでした。しかしそれで課題だったのは、利益の回収です。
ピザハットでは新店舗をオープンした後、ある程度の年数をかけて初期投資分の利益を回収するというビジネスモデルで展開してきました。しかし、今は先行き不透明とも言われる時代です。コロナ禍に見るように、何が起きるかわからない。店舗は当社にとって大切な収益源ですし、もっと短期的に利益を回収できるような体制を整える必要があったのです。
今回導入するBOPISは宅配バイクも置かなければ、展開する商品も絞ります。これまでのフルモデル型店舗のような設備でオープンしないので、初期投資をグッと抑えられています。投資回収期間は大幅に短縮される想定です。
──BOPISでも商品ラインアップは絞るのですね。
これも、「売る場所によって、売るべき商品を販売する」という考えのもと行うことです。BOPISをオープンする立地として現在想定しているのは、近くに通常店があり、人通りが多く、なおかつ住宅から駅への行き帰りで使われるような場所。今回開店する大阪・天神橋もその条件に合致しています。そのため、通常の店舗で販売している商品ラインアップではなく、食べ歩き用や家で食べる中食のための商品をサッと買っていただけるような商品を展開します。
当たり前だと言われてしまうかもしれませんが、売る場所が変われば、その店舗を利用する客層も変わります。客層が変われば何が変わるかというと、売れやすい商品も変わるはずなのです。そう考えると、地域や顧客層に合わせて商品を変えるのも、その商品を提供しやすい店舗形態に変更するのも当然。これまでのように売る努力もしながら、売りたい商品を、売れる環境でお届けしていく。そのようにして利益を追求する会社にしていきたいと思っています――
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