1月下旬以降、フジテレビのテレビCM差し替えで注目を集めた、ACジャパンの「決めつけ刑事(デカ)」。
このCMの監督を務めているのは、松屋「マツベンサンバ」のCMやソフトバンク「神ジューデン」CM、満島ひかりを起用した「突撃!南島原情報局」、2023年に放映されたドラマ『パリピ孔明』(フジテレビ系列)の演出も手がけた渋江修平さん。4月には映画『パリピ孔明 THE MOVIE』の公開を控えている。
嶋田久作さんをキャスティングした経緯、演出面や映像編集のこだわり、そして話題を集めている画面左下の「手話」の裏側などについて話を聞いた。
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ポイントは「刑事らしさ」と「異常性」のギャップ
CMでは、威厳のある刑事がSNSでの書き込みを鵜呑みにして容疑者を有罪と決めつけ、誤認逮捕をしてしまうさまをコミカルに描いている。
本作の広告会社はBBDO J WEST、制作会社は福岡市のランニング。キャスティングは渋江監督が担当した。
決めつけ刑事を演じる俳優の嶋田久作さんは、以前、渋江監督が監督を務めたドラマにも出演しており、その繋がりもあり今回の刑事役を打診したという。
全体を通して演出で重視したのは、「刑事らしさ」と「異常性」のギャップだ。
「いかにも本格的な刑事ドラマらしく演出することで、決めつけ刑事の異常性を際立たせようと考えました。そのためにセット自体の壁を暗く塗るなどつくり込みをし、刑事ドラマらしい厳かな雰囲気を強調しています。その上で、警察手帳型のスマホケースを容疑者に突き付けたり、張り込みの“お決まり”であるアンパンを食べながらもただ片手にネットサーフィンをしているだけ、といった異常性を感じさせる描写を入れました」(渋江監督)。
また画面の左下に常に表示されている、手話通訳も話題になっている。まるで登場人物のように、非常に感情豊かに通訳をしているのだ。これは渋江監督による“演出”ではないという。
「手話通訳は感情も含めて伝えることが大切」
当初渋江監督が考えていたのは、冷静な新米刑事のようなイメージで、無表情で淡々と手話で通訳をしてもらう案だった。ただ手話監修のチームからは「手話通訳は、話し手の感情も含めて伝えることが大切」という話が。結果的に、登場人物の感情を豊かに表現する手話通訳は、消費者の注目も集めている。
そのほか編集の段階では、音楽のセレクトに力を入れたという。決めつけ刑事の圧の強さを表現するために、その登場と同時にロック調の音楽が流れ始める構成に。
「ACジャパンのCMではありますが、あくまでエンタメとして視聴者に届けることで面白がってもらえて、結果的に内容がきちんと伝わる、と考えています。そのために音楽は大切な要素です」(渋江監督)。
「あなたも、こうなっていませんか?」と視聴者に問題提起をする場面に合わせ、音楽も盛り上がる。
当初からスタッフらには「決めつけ刑事」という言葉自体を広めたいという気持ちがあった。
「2024年7月の公開からやや時間は経っていますが、偶然にも注目を集めることになり、嬉しいです。このCMが流行することで、決めつけ刑事がいなくなることを願っています」(渋江監督)。
