広報とマーケティング、新定義に共通点  持続可能な関係性が成長の基盤に

日本パブリックリレーションズ協会は3月6日、「PR業経営者懇談会」を開催。その中で、日本マーケティング協会と日本広報学会が近年発表した「マーケティング」と「広報」の定義とその反響について振り返った。

日本広報学会は2023年、「広報の定義」を発表した。広報業務の高度化や複雑化に伴い、広報に対する共通認識を共有することを目的に、新たな広報概念の定義プロジェクトを立ち上げ、約2年かけて議論。広報は「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である」と定義した。同学会での定義発表はこれが初となる。

一方、日本マーケティング協会は2024年に、同協会が制定する「マーケティングの定義」を34年ぶりに刷新。ビジネス上の環境変化に対し、マーケティングの担う役割も変化を遂げていることから、協会の理事長である恩藏直人氏(早稲田大学教授)が定義の見直しを発案し、アカデミア関係者や実務家からなるメンバーによって策定された。

従来のマーケティングの定義は「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」だった。これに対し、新定義では「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである」と改められた。

日本マーケティング協会の福島常浩理事は「これからのマーケティングは、『生まれてくる需要をいかに早く奪い合うか』という観点ではなく、『目の前にいる顧客との関係をいかに深く、長く築いていくか』という観点が重視される」と話した。

広報の定義においても「関係性の構築・維持のマネジメント」が肝であるとし、顧客を含むステークホルダーとの対話を続けることを重視した内容となっている。それぞれの定義は意図せず「持続可能な関係性」に重きを置いたものとなった。

定義で経営陣に進言しやすく

日本広報学会の柴山慎一理事長は、「マーケティングと広報は表裏の関係にある」と指摘した。BtoC企業ではマーケティングを重視し、それを広報が支える関係性が多い。一方、BtoB企業や公益性の高い機関では広報を起点に施策を始め、その延長線上でマーケティングを考えるケースが多い。いずれの場合も、ステークホルダーとのコミュニケーションが重要である点で共通していると述べた。また定義を発表するに至った時代背景のほか、策定メンバーがアカデミア関係者と実務家で構成されている点も共通していると指摘した。

それぞれの定義に対する反響についても報告された。福島理事は「発表直後に比べ、徐々に様々なところから反響が出てきた」と述べた。柴山理事長は、「広報パーソンから『経営陣に進言しやすくなった』『来年はこの定義で事業計画をスタートする』といった声が寄せられている」と話した。

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写真 人物 日本マーケティング協会の福島常浩理事

日本マーケティング協会の福島常浩理事

写真 人物 日本広報学会の柴山慎一理事長

日本広報学会の柴山慎一理事長


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