伝統工芸品・地域産品の海外販路拡大を支援するサイトを日本ユニシスがオープン

近年、地域の伝統や生活様式に基づく産地のテキスタイルや職人の技、クリエイターやデザイナーなどの発想力を活かした付加価値の高い商品やサービスなど、伝統工芸品の国内需要は、日本人の生活様式の変化や、海外からの安価な輸入品の増大などにより、低迷傾向にある。一方、経済産業省の「クール・ジャパン海外展開事業」をはじめ、日本貿易振興機構、自治体、商工会議所、金融機関などが総力をあげて海外への販路拡大支援活動を行っている。その中で、一層効果的かつ継続的な取り組みが求められるようになった。

しかし従来、多品種少量生産を強みとする日本の中小企業やクリエイターが、海外へ販路を拡大する場合、海外との有力なチャネルの開拓や、継続的な関係維持が必要となり、投資余力や人材、スキル不足を理由に断念する人も少なくなかった。

こうした背景を踏まえ、日本ユニシスでは、多品種少量生産を強みとする日本の中小企業やクリエイターの海外販路拡大のための支援事業を開始。その第一弾として、日本人の感性、美意識、自然観、モノ作りの精神などを海外に発信することに最適な伝統工芸品(地域産品含む)分野を対象に、伝統工芸に関する情報、およびEC機能を持つ専用サイト「JCRAFTS.com」を開設した。これは、同社の「ビジネス創出人材育成プログラム」から生まれたアイデア。同プログラムでは若手を中心に、“創造や革新を自ら生み出す人材の育成”を目的に既存のITシステムではなく、新しいITで社会貢献できるビジネスを創出するべく、取り組みが行われている。

海外販路拡大支援事業の全体イメージ

海外販路拡大支援事業の全体イメージ

同社では、昨年7月から幻冬舎の書籍「武士の食卓」(料理研究家の緋宮栞那著)の英訳電子版をFacebook 上で海外ユーザーに向けてPR し、今年1月までに約5万4000人のファンを獲得した。今回、この知見を活かし、同社では事業全体の設計とコーディネートを担当。適宜最新の技術を導入することで、少ない投資で海外へのテストマーケティング(市場分析)を実現するとともに、仕入、物流、決済、アフターフォローまでの流れを一括して支援するプラットフォームの提供を行う。

JCRAFTS

「JCRAFTS.com」のサイト。将来的には、海外販路拡大に必要な機能を共通プラットフォームとして提供し、伝統工芸品(地域産品含む)以外の多品種少量マーケットへの横展開を支援する。

「JCRAFTS.com」では、4000品目の商品をラインアップ。日本の文化(本物)を海外に発信するというブランド戦略を大切にし、商品として、地域性やストーリー性が感じられる商品のみ厳選してプロデュースする。また、Eコマースとして商品を発売するだけではなく、日本のモノ作りの原点である伝統工芸品や逸品ものの情報や伝統工芸、生産工程、職人などのコンテンツの発信にも力を入れる。

他のEコマースと異なり、出店料は徴収しない方針のため、企業のみならず、個人で商品やブランドを展開しているクリエイターでも参加しやすい仕組みになっている。事業の収益は「販売額に応じた手数料」となり、商品在庫は持たず、海外からのオーダーが入った段階で仕入れるスタイル。その時の仕入額と販売額をあらかじめ決めておき、商品が売れれば手数料が入ってくるモデルとなる。

今後は同サイトを運営するナビバードと一緒に、伝統工芸関連の協会や自治体に声をかけながら、新たな商品開拓を行っていきたい考えだ。

『広報会議』2012年2月号
 特集 : 戦略に活かすキーワードとポイント 広報・PR 2012年の動きを読む
大阪府知事、市長が変わり「大阪都構想」を掲げ、アナログ放送完全廃止、東京スカイツリーの竣工、ロンドンオリンピックの開催、主要国で大統領選挙が行われるなどが続く2012年。広報担当者は自社の広報戦略の中でどんなことをキャッチし活動に活かしていけばよいのか。

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