広告キャンペーンの効果は“ブランド価値(認知)向上”や“購入意向の向上”で測られるケースが多いが、流通による“新商品の採用”や“売り場のスペースの獲得”も売り上げに結び付く重要なキャンペーンの効果といえる。
筆者の知る限り、そして色々な店舗を訪れる限り、最近この売り場スペース獲得にデジタル施策が寄与しているケースが増えたと感じている。読者の方も、消費者としてあるいはキャンペーンを担当されている立場から、このようにデジタル化が進む広告キャンペーンやプロモーションを通じて、売り場獲得や新商品導入の商談が進むケースも増えてきたと感じていないだろうか。
ストライド ヤバーランド1000万円埋蔵金伝説キャンペーン
日本クラフトフーズは1月23日より(2月29日まで)、ガムのブランド「ストライド」でテレビ広告などとフェイスブックを連動させた「1000万円埋蔵金伝説」キャンペーンを展開している。筆者もツイッターのタイムラインやフェイスブックのウォールの情報で本キャンペーンの情報を知り参加、一応最終問題まで解答した(早いもの勝ちなので、正解していても商品を得られるかは不明である)。
キャンペーンでは毎日ヒントがフェイスブック上で更新されるため、頻繁にアクセスした。問題が難しいため朝晩や週末にかなり時間をとられたが楽しめる内容であった。期間中にコンビニに立ち寄ると、あるチェーンではいつもよりストライドの売り場が拡大されており、本キャンペーンでフィーチャーされているメガミステリー2の商品もあったため、筆者は数回購入している。このキャンペーンが無ければ購入していなかったので売り上げ効果は筆者に関してはあったといえる。
ただし、今回のキャンペーンは「早い者勝ち」という設定があり、巨大掲示板での正解書き込みや、問題を解いていないにもかかわらず最終問題のURLの開示が行われるなどのデジタル特有の問題も散見されたが、フェイスブックユーザーのクイズ好きには十分楽しめるものになっていたのではないだろうか。終了後にぜひ本キャンペーンの手ごたえと効果に関して担当者に聞いてみたいものである。新商品採用、売り場を獲得できていると推定されるので、今後同じようなキャンペーンが出てくる可能性があると筆者は予測している。
ジョージア・ブラックス「続きはツイッターで」キャンペーン
2月6日発売の日経ビジネスの特集や各種講演でも紹介しているが、日本コカ・コーラで2010年4月12日より行った、「ジョージア・ブラックス」コーヒーのツイッター連動キャンペーンでは、ソーシャルメディアによる製品の継続売り上げに貢献が見られた。従来の缶コーヒーが蓋なしの製品を一気に飲み干すような消費形態だったのに対して、この商品は濃く味わいのあるエスプレッソブレンドコーヒーを蓋つきの容器でゆっくり飲むコンセプトであった。したがって、キャンペーンのコアコンセプトを「いいものはちょっとずつ。」と置いた。当時、歴史小説やドラマがはやっており、またツィッターがメディアとして伸びてきていることに着目し「いいもの」=「歴史小説」とし、「ちょっとづつ」=「ツィッターで140文字づつ配信」とするキャンペーンアイディアに行き着いたのである。
よく知られた歴史上の人物「織田信長」の史実「本能寺の変」で織田信長が生き残ったという設定の戦国時代に現代のビジネスマンがタイムスリップして色々な事件が起こるという「歴史アドベンチャー小説」を毎日ツイッター上で配信するという内容にたどり着いた。テレビCMは「本能寺の変」のさなかにゆっくりとコーヒーを飲む織田信長が生き延びるところまでを描写し「続きはツイッターで」とWebにバトンを渡すという役割である。当時はまだまだツイッターの会員数も認知も低かったので、このキャンペーンの実施に関してもいろいろ大変であったのだが、実施してみると我々の予想しない効果が表れたのである。
下の図を見ていただきたい、一般的な商品ではテレビ広告を行うと製品の認知などが上がって一時的に売り上げが伸びるものの、放映後はすぐに認知や売り上げが下がってゆくのであるが、エスプレッソブラックスに関してはCM放映後も継続して売り上げが伸びたのである。日本コカ・コーラでは類似の商品発売をしたことが無いので一概には言えないが、テレビよりはるかに長い期間(再掲載も含む)商品の主要販売ルートであるコンビニエンスストアでの売り上げは、CM放映終了後も徐々に伸びて、いったん下がったものの継続的に入れているということがわかると思う。
このほかにも弊社や他社も含む各種の「売り場獲得」や「売り上げ向上」をデジタル施策(含む他メディア連携)で実現したという例は多いだろう。そして、将来的には位置情報や顧客の嗜好を組み合わせて、消費者のメリットや利便性に訴える商品が出てくると考えている。特にスマートフォンのGPS機能などを使うと直接売り場でアピール(広告・クーポンなど)できたり、顧客を売り場に誘導するなどということも可能となってくる。あるいは新たな商品やアイテムを開発してしまうことも考えられる。今後も多くの事例が出てくると思われる。しっかりとフォローしたい。
江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー
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