欧米のクリエーティブエージェンシーでは、基本的にコピーライターとアートディレクターの2人1チームでプロジェクトを担当します。これはどうやら昔々コピーライターが広告の「スクリプト」を書いて、それに対してアートディレクターがイラストレーターを探してきて絵をつけるという分業制を行っていたことに由来するようです。ちなみに僕は日本にいたときはCMプランナーという職種についていましたが、初めて海外に出たとき、お前はコピーなのかアートなのか? と選択を迫られました。自分は「CMプランナー」だと海外で言っても、これは日本だけの特殊な職種なので全く意味が通じないので注意が必要です……。
さて、そのチーム制がなぜ今も引き続き存続しているのかは謎ですが、ともかく仕事が発生すると、僕もチーム単位で仕事をブリーフィングします。そしてピッチのような場合以外、多くはCDとコピーライター&アートディレクターという3人だけでクリエーティブ開発を進めます。コピーとアートと分かれてはいますが、両者ともにアイデアは考えるし、どちらかというと最終的な担当エリアを規定しているといった感じです。
少人数のチームのおかげでミーティングが早かったり(大抵30分から1時間)、フットワークが軽かったり、何よりそのプロジェクトを「自分ごと」にできるのでちゃんとスタッフに責任感が生まれるのがメリットかなと感じています。その半面、チーム間の競争も激しく他のチームやプランナー(ストラテジックプランナー)の意見を相容れないような状況もよく生じたりします。ただ総じていうと、とても健康的なクリエーティブ環境かなぁと思います。
世界最大の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」の舞台となる道路に応援メッセージを記すための装置を作成。レーサーへの応援だけでなく、ガンなどの病気と闘う人へのメッセージも込めた(下の写真)。2010年カンヌのサイバー部門グランプリを受賞。ワイデン+ケネディ ポートランドが制作した
今こちらのエージェンシーが一番苦悩しているのは、そういったコピーライター&アートディレクターチームにどうやって「インタラクティブ」をインテグレーションさせるかという問題です。今どこも必死に進めていますが、まだ世界中を見てもきちんと「トラディショナル」と「インタラクティブ」を両立できているエージェンシーはほとんどないと思います。“NIKE Chalkbot”や“Old Spice”(P&G)を大成功させたワイデン+ケネディでさえ、内部にいると、実はまだまだだなぁと感じることがたくさんあります。(次ページに続く)