井浦知久(ユラス 代表取締役)
プラットフォームを築いてユーザーとダイレクトにつながる
前回、オウンドメディアは自前の放送局のようなもの」という話をしました。
インターネットが放送網とするなら、放送設備にあたるのが自社サイトであり、
そのベースとなるのがオウンドメディアの「プラットフォーム」です。
それが、どういうものか見ていきましょう。
まず、放送局であるためには、企業側から視聴者(ユーザー)に
継続的に情報を届けるための手段が必要です
フェイスブックでは、視聴者が「いいね」することで
企業のアップデートが勝手にフィードされて、とても便利ですが、
一方で、視聴者の友達が数百人規模だとすると、
情報が埋もれてしまって目にしてもらえない可能性も高くなります。
2100万の会員を持つ日本マクドナルドの「トクするケータイサイト」は、
会員が登録したケータイのEメールアドレスに、毎週クーポンメールを配信していて、
それが届くのを楽しみにしている大勢の会員がいます。
コカ・コーラ パークも、キャンペーン情報などをメールで毎日提供しています。
現時点では、企業からの情報伝達手段は、やはりEメールが最善でしょう。
ユーザーにメールを配信するには、ユーザーのアドレスを取得し、
パーミッション(許諾)をとる必要があるため、
企業サイトに会員登録をしてもらうことが前提になります。
したがって、会員管理のためのCRM的な機能と、「マイページ」のような会員サイトは、
オウンドメディアのプラットフォームの基本要件になるのです。
これに加えて、「マーケティング施策のプロセスを管理して、効果測定する機能」と、
「会員とのコミュニケーションチャネルを築いて、会員に最適化したコンテンツを届ける機能」
のふたつの機能が、オウンドメディアのプラットフォームには必要であると筆者は考えます。
マーケティング施策のプロセスを管理する
では、オウンドメディアは単なる自社サイトと何が違うのか?
最大のポイントは、企業側から会員にアプローチする手段を持ち、
マーケティング施策を継続的に展開できることです。
ユーザーに会員になってもらうためには、継続的に会員が興味を持つような
コンテンツ(マーケティング施策)を提供しなければなりません、
たとえば、「トクするケータイサイト」のクーポンのようなインセンティブ型コンテンツや、
「コカ・コーラ パーク」の使い勝手のよいポータル型のメディア型コンテンツと、
プレゼントキャンペーンのようなファン(楽しみ)型コンテンツなどがその好例で、
そこには、継続的に会員を惹き付けるための仕掛けがあります。
こうした継続性のある惹きの強いコンテンツを考える上でのヒントが、実はテレビにあります。
人気のある連続もののテレビドラマには、次週も見たくなるような仕掛けが
巧みに盛り込まれているため、継続して視聴されるのみならず、
話題になれば口コミを通じて視聴者を確実に増やしていくことができます。
そして、テレビの毎回の視聴率にあたるのがマーケティング施策の効果測定です。
オウンドメディアで施策ごとに実績を管理するためには、
そもそも施策それ自体を管理していかなくてはなりません。
筆者の考えるマーケティング施策のライフタイム(一生)は次の5つのステップからなります。
(1)施策の立案、(2)施策の実施、(3)実績の回収、
(4)結果の可視化、(5)分析/施策へのフィードバックのプロセスです。
マーケティング施策単位でこれら5つのプロセスを管理しつつ、
複数の施策を並行して実施していき、効果検証した結果を、
次の新たな施策へとフィードバックしていくのです。
特徴的なのが、結果を可視化するプロセスですが、
実績をわかりやすく図表化することで、マーケターが実体をシンプルに把握し、
直感的な判断をくだすための手助けをします。
これらのステップを通して施策ごとの「視聴率」を正確に把握し、
その効果を評価して、次の施策の改善へとつなげることを、地道に繰り返していきます。
(次ページヘ続く)
『オウンドメディアマーケティング 顧客との関係を創造し、ビジネスを強化する自社メディア戦略』
井浦知久・著
コーポレートサイトは、単に“企業の情報を発信する”ツールではない。“顧客とのダイレクトな関係性を創造する自社メディア”へと進化させる「オウンドメディアマーケティング」を実践することで、売上げに貢献するビジネスモデルへと発展させることができる。ソーシャルメディアの先にある、新しいマーケティングの手法とノウハウをまとめた1冊。