“2泊3日”の地方ブーム、再燃

東北新幹線は2010年12月に八戸-新青森間が開業し、東京-新青森間の全線が開通した。写真は3月5日にデビューするE5系「はやぶさ」

かつて、「アンノン族」と呼ばれる若い女性たちがいたのをご存じだろうか。

1970年代、創刊されて間もない女性誌のan・anやnon-noを小脇に抱え、同誌が頻繁に特集した風光明媚な地方の名所旧跡――軽井沢や清里、金沢などへと出掛けた女性たちの呼び名である。

ちょうど、国鉄のキャンペーン「ディスカバー・ジャパン」も、大阪万博が終わった70年10月にスタートしており、「美しい日本と私」のコピーが象徴するように、若い女性たちが地方を訪れる行為がトレンドになった。古い寺院を訪れる行為がオシャレになり、今でいう「パワースポット」巡りの走りでもあった。

しかし――80年代に入ると、ファッションやグルメ文化が時代のトレンドになり、パルコや東京ディズニーランドのブームとも相まって、若者たちの関心は「東京」へと向かい始めた。以来、地方のリゾート地が一時的に脚光を浴びることはあっても、時代の主役は一貫して東京である。

一方、地方は郊外にショッピングセンターができるなどして駅前はシャッター通りになり、若者たちは高校を卒業すると都会へと流出し、年々寂れていった。時の政府や地方の首長が「地方分権」を叫んでも、実態は伴っていない。

九州新幹線は、3月12日の博多-新八代間開業で全線が開通する。山陽・九州新幹線の直通運転によって新大阪-鹿児島中央間を約4時間で結ぶ

ところが――ここへ来て、かつての「アンノン族」を彷彿させるように、女性誌がこぞって地方の特集を組み始めたのだ。背景には「歴女」の増加や、ネット通販の「お取り寄せ」人気、女子高生たちの「方言」ブームなどがある。温泉地ばかりではなく、個性的なホテルの紹介記事も増えてきた。地方の美術館といった文化的な施設も脚光を浴びつつある。そう、今や都会の女性たちの足は、確実に地方へと向かっている。いや、地元の女性たちも黙ってはいない。全国各地で発刊される「美少女図鑑」は、今や発刊されると同時に品切れになると聞く。テレビ番組の「秘密のケンミンSHOW」に至っては、ご当地が特集される県では、30%以上の驚異的な高視聴率を稼いでいる。

そんな中、昨年12月、東北新幹線が新青森まで延伸し、この3月からは九州新幹線も開業する。南北へと更に伸びた新幹線で、地方への関心がますます高まるのは間違いない。それでなくても、近ごろは「鉄女」なる鉄道好きの女性が増えつつあり、様々なローカル線を乗り継いで、彼女たちが地方を旅する姿もよく見られる。今年は「3連休」が昨年よりも3回も多く、計8回。JTBによると、国内旅行の需要予測は、昨年より1.2ポイント増の3億200万人を見込んでいるとか。

1泊2日の忙しい旅でなく、2泊3日でのんびり地方を満喫してはいかがだろうか。

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草場 滋(作家・メディアプランナー)
草場 滋(作家・メディアプランナー)

エンタテインメント企画ユニット「指南役」代表。

米エミー賞にノミネートされたテレビ番組「逃走中」(フジテレビ)の企画や、映画「バブルへGO!」の原作ブレーン、日経エンタテインメント!誌「テレビ証券」の連載など、メディアを横断したプランニング活動に従事。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。著書には「キミがこの本を買ったワケ」(扶桑社)、「『考え方』の考え方」(大和書房)、「情報は集めるな!」(マガジンハウス)などがあり、マーケティング・企画関連で幅広く執筆活動を行う。

最新刊「一流の仕事人たちが大切にしている11のスタンダード」(実務教育出版)が12月18日発売。

指南役: http://www.cynanyc.com/

草場 滋(作家・メディアプランナー)

エンタテインメント企画ユニット「指南役」代表。

米エミー賞にノミネートされたテレビ番組「逃走中」(フジテレビ)の企画や、映画「バブルへGO!」の原作ブレーン、日経エンタテインメント!誌「テレビ証券」の連載など、メディアを横断したプランニング活動に従事。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。著書には「キミがこの本を買ったワケ」(扶桑社)、「『考え方』の考え方」(大和書房)、「情報は集めるな!」(マガジンハウス)などがあり、マーケティング・企画関連で幅広く執筆活動を行う。

最新刊「一流の仕事人たちが大切にしている11のスタンダード」(実務教育出版)が12月18日発売。

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