女性誌10誌を比較する質的指標を提示
雑誌広告の価値検証を目的に出版大手5社が実施した共同調査の結果がこのほど発表された。主要女性誌を対象に、雑誌愛読者の生活意識や広告接触後の態度変容を調べたもの。読者が雑誌に対して持つイメージや読まれ方から女性誌10誌の特性を比較できるようにしたほか、雑誌や交通広告、インターネットなど複数メディアで展開したキャンペーン事例で、雑誌広告を起点をしたSNSによる口コミの広がり方についても分析した。
実施主体は講談社と光文社、集英社、小学館、マガジンハウス。女性誌愛読者を「マガジェンヌ」と称し、その特性を明らかにする狙いで、2011年10月~11月に実施した。2011年2月に発表(実施は2010年9月~10月)された調査に続いて2回目となる。調査対象は対象10誌の特定号のうちいずれかを購入した人で、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する「Tカード」会員から抽出して募り、2542人から回答を得た。前回調査は対象誌内に掲載した広告で募集していたが、意識面でより幅広い層から回答を集められるようにした。実査・集計はユーティルに委託した。
対象雑誌は次の通り。
- non-no(集英社)
- ViVi(講談社)
- 美的(小学館)
- MORE(集英社)
- with(講談社)
- Oggi(小学館)
- VERY(光文社)
- STORY(光文社)
- an・an(マガジンハウス)
- クロワッサン(マガジンハウス)
「意識」と「読み方」から、読者と雑誌の関係性明らかに
雑誌と読者との関係性に着目した分析結果では、媒体資料からは比較しにくい雑誌ごとの「性格」の違いが浮き彫りになった。関係性を「意識」と「読み方」の指標に分け、「意識」では読者が雑誌に求める要素を「情報源」「ビジュアル」「絆・共感」「リラックス」の4つから各誌の特徴を図式化。「読み方」は雑誌を読むレベルを「パラパラと写真を眺める」程度から「バックナンバーを取っている」まで4段階に分け、雑誌ごとにその割合を示した。
図表の見方
<意識>
「情報源」…雑誌の情報の確かさ
「ビジュアル」…広告や写真の美しさ
「絆・共感」…雑誌とのつながりの強さ
「リラックス」…くつろいだり気分転換したいときにふさわしい
<読み方>
「レベル4」…いつも手元に置いている、バックナンバーを取っている
「レベル3」…気に入った記事や広告には目印をつける、何度も繰り返し読む
「レベル2」…決まって読むコーナーがある、気に入った記事や広告は切り取って持ち歩く
「レベル1」…パラパラと写真を眺めるように読む
■non-no(集英社)
■ViVi(講談社)
■美的(小学館)
■MORE(集英社)
■with(講談社)
■Oggi(小学館)
■VERY(光文社)
■STORY(光文社)
■an・an(マガジンハウス)
■クロワッサン(マガジンハウス)
メディア価値検証に向けた取り組み進む
このほか今回の調査では、ファッション関連商品を対象に、認知、関心、選択といった購買プロセスごとにメディアが与える影響のほか、購入後の商品評価の確認意向や他の人への推奨意向についても調べた。それによると、「商品を購入した後に評価を確かめたい」(確信)メディアとして雑誌は口コミやSNSなどに次いで高い値を示したほか、「購入した商品について、他の人に推奨するのに参考にする」(推奨)メディアとしてはインターネットや店頭も含めた他メディアを大きく引き離した。
今回調査設計を監修した清水聰・慶應義塾大学教授は、「生活者が情報発信者でもある今、雑誌広告が誰にどのような情報として発信され、その情報がどのようにフィードバックされるかなど、ブランド価値を高める循環型コミュニケーションまで考慮する必要が生じている」とコメントしており、「循環」の視点から雑誌メディアの可能性を示したとしている。
「マガジェンヌ」調査は、これまで発行部数や閲読率、広告接触率などリーチにかかわる基準で評価されてきた雑誌広告について、新しい価値指標を提示する狙いで始まったもの。2011年の雑誌広告市場は前年比7.0%減の2542億円(電通調べ)で、2000年以降前年割れが続いている。広告主からは、各誌を比較することができる雑誌メディアデータの整備を求める声が多く、主要な広告メディアである女性誌を対象に大手5社が共同調査に踏み切った。調査結果は広告主や広告会社に向けて積極的にアピールする意向で、広告掲載やセミナーなどを検討している。
雑誌広告の価値を示す指標策定については、日本雑誌協会広告委員会もより広いジャンルの雑誌を対象に共同調査を進めている。