※本記事は、『ブレーン』の連載「楓セビルのアメリカンクリエイティビティ」の「世界の広告賞を解剖する」シリーズ(10月~12月号掲載分)を転載したものです(一部当時の状況と変わっている部分もございます。ご了承ください)。
文・楓セビル
「賞を受賞すると、多くのクリエイターはリラックスする。リラックスすると、良いアイデアが浮かぶ。賞にはそうした効果がある」
(マルチェロ・サーパ AlmapBBDO チーフ・クリエイティブディレクター)
メジャーな広告賞とその意味
このコラムでは、3回に分けて国際広告賞をテーマに報告する。1回目ではサーパが言うように、受賞したことでクリエイターが“ リラックス” できるメジャーな5 つの国際賞の特徴、業界評価などについて報告する。賞の評価は、国際的な広告賞を数多く獲得している大手広告会社の最高執行責任者で、メジャーな賞の審査を数多く経験している世界的に有名なクリエイターたちのインタビューと、賞の主催者の意見、その賞の獲得を目指す若いクリエイターの意見などをまとめたものだ。
また、ここでは、大手広告会社が行っている賞への応募作品の選択方法についても言及する。
第2回では、今回取り上げられなかったいくつかの特筆すべき賞について触れる。そして3回目は、「国際広告賞ははたしてフェアか?」という昔から国際広告賞につきものの疑問への解答を探ってみたい。
世界には100を超す広告やマーケティングのクリエイティビティに与えられる賞がある。毎年さまざまな賞に数十万人規模のアドパーソンが応募する。賞のカテゴリーやその質、評価などはまちまちで、ブラジルの最もクリエイティブな広告会社のひとつ、AlmapBBDO の最高クリエイティブ責任者マルチェロ・サーパが言うように、賞を得てクリエイティブが“ リラックス” できる賞はそれほど多くない。サーパは1993年、29歳のころにブラジル飲料大手アンタークティカの「ダイエット・キャンペーン」で、旧カンヌ国際広告祭プリント部門のグランプリを受賞している。
米国を中心とした欧米広告界のクリエイターが重要視する広告賞は、よく「1+4」と言われる。最初の「1」は、際立って重要な賞と認識されているカンヌ国際広告祭である。従来、正式には「Cannes Lions International Advertising Festival」と呼ばれてきたが、今年から名称中の「Advertising」の代わりに「Creativity」を加えた。広告という狭い分野のための祭典ではなく、投資対効果を基礎にしたマーケティング活動のクリエイティビティを評価する祭典であることを主張するためだと主催者は語る。
米国の有名なクリエイターのほとんどはサーパのように、カンヌでグランプリを獲得したことが「クリエイターとしての人生を変える」きっかけになった。レオ・バーネットのワールドワイド・クリエイティブディレクター(CD)マーク・タッセルも、まだアートディレクターだった1997 年にメルセデスのアウトドア広告でグランプリを獲って、出世の階段を駆け上った。2 年前から、オグルヴィ・アンド・メイザー(O&M)のワールドワイドCD を務めるタム・カイ・メンも、数多くのカンヌ金賞受賞者だ。
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