「宣伝会議インターネットフォーラム2012」が6月6日、東京都内で開かれ、フェイスブックや動画活用、オウンドメディア、ECなどを、デジタルメディアやツールを活用したマーケティングをテーマに多くのセミナーが行われました。その一部を6月から7月上旬にかけて、本欄で紹介します。
須藤貴志氏(ユナイテッドアローズ/事業支援本部販売支援部部長)
相川慎太郎氏(ユナイテッドアローズ/事業支援本部EC統括チームリーダー)
カード会員の購入単価は2倍
須藤 当社では、07年8月にサービスを開始したメンバーズカード「ハウスカード」を通じたCRM戦略に力を入れています。購入金額に応じてポイントが貯まる仕組みで、会員は140万人を超えています。カードの利用履歴をもとに購買行動を分析し、施策に活用しています。ハウスカードの目的は、再来店を促しリピーターを増やすことと顧客単価を増やすことです。
スタートから約5年たち、ハウスカード会員の売上効果について見えてきたことが3つあります。1つ目は、カード会員の客単価が非会員に比べ平均1.5~2倍であること。2つ目は、会員の購入頻度は平均1.78回/年と非会員に比べて大幅に上回ること。そして3つ目はカード会員の売上伸び率が高く推移しているということです。カード会員の売り上げの伸びが、全体の売り上げ増加の大きな要因になっているということがわかりました。
現在、カード会員の売上シェアは既存店の売り上げ全体の47.1%、前期比104.8%となっています。今後も、新規会員の獲得と会員のファン化・サポーター化を推進していこうと考えています。
ECと実店舗連動型の組織体制
相川 当社のECの現状と課題についてお話します。当社がECに本格参入したのは05年で、8億円の売り上げでした。以来、ZOZOTOWNを中心にAmazonやスタイライフなどでECを展開し、09年9月から自社直営サイト「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」を始めました。12年3月期にはECの売り上げは105億円に成長し、今や全社売り上げの11.1%を占めています。
ECの売り上げ好調には理由があります。直営通販サイト「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」では、実店舗と同様のMDや店舗在庫の情報公開、店舗スタッフのスタイリングのアップなど、実店舗との連動を強化しています。ハウスカードポイントとの連携や会員様登録の簡素化、インセンティブの付与など全社CRM施策に準じた集客と販促も実施しています。ネットとリアルを分けない組織スタイルにこだわっています。
さらに、EC担当者は各ブランド(ユナイテッドアローズ、ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ、ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシングなど)の事業本部内に所属させ、売り上げや在庫責任も各ストアブランドに帰属しています。またZOZOTOWNや直営通販サイト「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」では実店舗の物流センターと連動させ、共通のシステムで在庫管理を行っています。
結果、実店舗だけ利用する顧客に比べ、ECと実店舗の併用顧客は平均単価が2.2倍にもなっています。ECを併用する「マルチチャネル顧客」はリアルの売り上げを押し上げるのです。
今後の課題は、あくまでも軸足を実店舗の集客に置きつつ、さらなる新規会員の獲得や実店舗との連動強化を行うことです。自社以外のECサイトでも、店舗と同じブランディングや同レベルの接客サービスの提供、ECの売り上げを極大化させるための商品開発やマーケットづくりが必要です。
次回はリーバイ・ストラウス ジャパンです。
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