「宣伝会議インターネットフォーラム2012」が6月6日、東京都内で開かれ、フェイスブックや動画活用、オウンドメディア、ECなどを、デジタルメディアやツールを活用したマーケティングをテーマに多くのセミナーが行われました。その一部を6月から7月上旬にかけて、本欄で紹介します。
熊村剛輔(リーバイ・ストラウス ジャパン/デジタル マーケティング マネージャー)
新しいグローバルとローカルの関係
グローバル戦略についてはこれまで、セントラライズ、つまり中央にまとめるという考え方がありました。我々のような外資系企業は本社からその傘下の各国オフィスまで、決まったメディアを通じて、決まった顧客に対して、一貫したメッセージを流していく、ということが行われてきました。これはマーケティング、コミュニケーション以外でもビジネスにおけるディレクション全般に言えます。
それが大きく変化したのはソーシャルメディアの登場がきっかけです。世界共通のプラットフォームからコミュニケーションができるようになり、まず情報の伝播力に拍車がかかりました。例えばフェイスブックでローカル独自のキャンペーンを行っていると、言語さえ通じればいろんな国に波及します。しかも広がる速度に対してオペレーションがうまく働かない。これは言い換えれば、ローカルから情報を広範囲に展開させやすくなったとも言えます。実際に韓国で引きの良かった広告映像が全世界に発信されるという例もありました。
すると、次は各国の各部門単位で自分たちの情報を発信しよう、お客さんと交流しようという動きになるわけです。リアルタイム性、双方向性が生まれ、中央はコントロールしようがない領域が増えたのを認識せざるを得なくなりました。これはデジタルがもたらした新しいグローバルの形と考えることができます。
細分化されたユーザーにアプローチを
では、これからグローバルとローカルの関係性はどのように捉えれば良いのか。戦略としては、キーとなるメッセージやビジュアル、枠組みといったごく基本的な柱だけを決め、あとはローカルの個々の判断に任せるという形に変わってきています。その上で中央は各国のマーケットに合わせたコミュニケーションマニュアル、メッセージ、クリエイティブなどディテールを組んでいきます。つまりグローバルが器、ローカルがコミュニケーションという役割になりました。
関係性が変化し、デジタルマーケティングのとらえ方も変わっていきます。例えばフェイスブックで各国のコミュニケーションの状況を見ていくと、国、地域、人種など大体の傾向が見えてきます。たとえばコメントが多い地域、「いいね!」が多い地域、クリック数は多い地域などがあり、するとKPI(重要業績評価指数)の設定は属性によって異なります。日本ならたくさんコメントを残したら良いとは言えません。クリック数を見る方が良いという風になります。つまりコミュニケーションの位置づけというのは各国で違っているわけで、当然施策の形も変わってくるんですね。今後、日本から世界に展開するということを考える時、この事実はとても重要になってくると思います。
言語の問題をクリアすれば、デジタルの世界は限りなくボーダレスです。ただユーザー間にはボーダーが存在し、細分化されています。それぞれに合わせたアプローチや評価の仕方を考えなければならないということですね。
次回は富士急行です。
連載【インターネットフォーラム】バックナンバー
- (17)ユナイテッドアローズ「ECは実店舗と同じ物流システムを使います」
- (16)アメリカン・エキスプレス・インターナショナル「デジタルでオペレーティングのモデルを変えていきます」
- (15)ヴァージン アトランティック航空「お客さまと直接つながる機会が必要だと感じていました」
- (14)ライオン「アプリのPR効果は半年で投資の8倍に」
- (13)東芝「“コンテンツ”は長期のブランド構築が可能なプラットフォーム」
- (12)ニューバランス ジャパン「今年注力したいのはやはりスマホです」
- (11)フィリップス エレクトロニクス ジャパン「炎上を恐れず、入念な準備の上でSNSを運用して」
- (10)日本サブウェイ「素早い顧客対応がソーシャルメディア活用の鍵」