7月29日に行われた山口県知事選挙で、現職の二井関成知事が後継指名し、自民党と公明党が推薦する山本繁太郎氏(63歳、無所属、元国土交通審議官)が初当選を果たした。
環境エネルギー政策研究所の所長で、国のエネルギー関連の委員や大阪維新の会のブレーンを務めた飯田哲也氏(53)、ら無所属3新人と4候補の戦いで、投票結果は次の通り。
▽山本繁太郎、無所属、新、当選、25万2461票。
▽飯田哲也、無所属、新、18万5654票。
▽高邑勉、無所属、新、5万5418票。
▽三輪茂之、無所属、新、3万7150票。
中国電力が進める上関原発建設計画(同県上関町)への対応などが主な争点だった。投票率は45.32%で前回選挙(2008年)を8.11ポイント上回った。山本氏は山口市で記者団に「県民の安全安心を第一に考えて対処する」と述べ、上関原発建設計画の凍結方針を示した。脱原発・再生可能エネルギー推進を掲げる飯田氏の出馬がなければ二井関成知事の後継である山本氏が原発計画の凍結を示すことはなかったはずだ。その意味で今回の選挙の結果は、今後の国政にも影響を及ぼすと見られている。
開票後、飯田哲也氏はフリージャーナリスト、横田一氏との質疑で次のように語った。
――今回の県知事選ではこれまで選挙に関心がなかった人にも関心を呼んだのでは?
今回はネットワーク選挙。若い人たちはインターネットやフェイスブックを活用しましたし、年配の方はご縁のネットワークを広げた。政治というのが単に一票ということではなくて、社会構造とのつながりが変わっていくこと。私自身もそれを狙ってやりましたし、みなさんも実感されたのではないでしょうか。
これまでは既成の政党や団体に言われるがままの人と、全くそこに属さない無関心層とに二極化していた。そこに信頼のつながりを感じさせることで、インターネット上と人のご縁とでつながっていったので、新しい社会の形が見えてきたと思います。
――飯田さんが選挙に出たことで、山口県内の方が変わったと思いますか?
ここまで閉塞感に覆われた人たち、夢と希望がなくて、遠目から見ると、「超保守県だ」と言われる山口ですが、超保守の分厚い鉄板の下では抑圧されたマグマのようなものが間違いなくあることを感じました。あまりに鉄板が分厚くて(政治に)無関心で離れていた人と、分厚い鉄板で抑圧されて何とも言えない不満を感じてやってきた人と、その両方の人たちが私の登場でお互いをつなぎなおすことが出来たと思う。
――17日間の選挙戦で一番印象深かったことは何ですか?
5歳の女の子のラブレターでした。読み返しても涙が出てくる。すごい重たいものを背負ったなということと、後、「生まれて初めて投票したいと思う人に出会った」と言っていただいた97歳のおばあちゃんたちの言葉を含めて。
面白かったのは、大きな事務所の中にお父さんと若い息子さんがいて、デカデカと対立候補の方のポスターが貼ってあって、お父さんは背を向けたままなのですけれども、若い息子がわっと出てきて、「飯田さん、よろしくお願いします」と。これは世代間の違いを感じさせるものでした。
若い人と女性とリタイアしたシニアの方には反応が良かった。特に若い学生や子供たちには人気がありましたが、一方で その間の年代は、保守陣営との仕事の関係が強く、反応は今ひとつでした。ただし自由業の方には人気がありました。大体、組織に属している男性の方は、少なくとも表立っては反応できない。県庁前で辻立ちをしても、みんな能面のように見ているのに見えないふりをする、というのがよく見えました。いろいろ縛られているのだな、という印象を受けました。
――選挙に出て良かったことは何ですか?
私がFacebookで紹介したお店などに、露骨な嫌がらせがあって、ご迷惑をかけてしまった。私の耳にも届いていないことがいろいろとあったと聞いています。それでもすごく手応えがあって、この選挙の結果に問わず、この1カ月間、私と一緒にこの選挙を闘った人は少なくとも夢を見られたのではないか。次のステップに進めると、もっと面白い、いいことが出来ると思います。私自身も非常な財産を得ることが出来た。その意味で明日からまた新しいスタート。
私が訴えた、今のこの社会の根本にあるものがおかしいじゃないかということ、もっと人間の顔をした政治や経済や社会にしていかなければならないのではないか、「脱原発」だけではなくて社会全体を変えていかなければならないのではないかということ、このメッセージを県民の皆様の心に届けることができたと思っています。
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