3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、これまで日本で経験のない未曾有の地震であったことが徐々に明らかになってきている。企業経営者はその危機的状況を認識した上で、企業トップとしての重大な責任を果たすべく、対応を求められている。以下は、その危機的状況、経営トップの心構えと企業広報の在り方についての概略を記載したものである。
今回の危機的状況
- 日本の歴史上、過去400年で最大の地震(マグネチュード9.0)
- 日本列島に沈み込むプレート境界地震
- 未曾有の津波の発生
- 被災現場で猛威をふるう火災の発生
- 継続する大規模な余震
- プレートに沿った震央の移動に伴う地震の脅威
- 日本列島の広範囲を襲う被災と多数の避難所生活者の疲弊
- ライフラインの崩壊と正確な情報の遮断あるいは極小化
- 長期に及ぶ復興・復旧作業と経済後退
- 医療・金融システムの緊急的措置の対応
- 原子力発電所等における災害事故の発生
経営トップの心構え
- 従業員及びその家族の安否・社内インフラ、取引先及び仕入先等の被害状況の確認から社内関係被災者の救援体制、事業継続のための体制の再構築
- 被災現場においてCSRの視点からの近隣住民等の直接的被災者支援体制の構築及び企業としての義援活動等の間接的支援体制の検討・実施
災害時の企業広報
■社内への広報活動
- 事業継続の視点から社内インフラ・拠点・取引先・仕入先等に関連する正確な最新報道情報を収集し、社内危機管理対策本部の担当部署(総務部等)へ情報提供
- 専門家情報の分析・評価を行い、同対策本部へ情報提供
- ライフライン等に関する事故及び関連する最新報道情報の収集と同対策本部への情報提供
■社外への広報活動
- 事業継続に関連する重要情報の開示、また被災が大きい場合は会社としての危機管理対応状況の継続開示
- 被災が大きい場合のインフラ復旧状況、生産体制、販売体制、サービス提供体制等の影響に係る重要情報の開示
■ CSR視点での広報活動
- 企業の社会的責任活動としての義援金等の発表
- 被災現場における近隣住民等への救済・支援活動の継続的開示
- 社内インフラを利用した情報収集と国や関係者への情報提供
- 緊急時における顧客への優遇措置や利用実施の変更に伴う情報の開示
■ 震災に関する根拠の無いチェーンメールや怪情報への注意喚起
- 社会的に影響の高い事業において、蔓延する根拠の無いチェーンメールや怪情報に対する速やかな訂正情報の開示
- 問い合わせに対する正確な情報提供
白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
- 第17回 「米国で見た災害時の企業のCSR活動」(3/10)
- 第16回 「ニュージーランド地震に学ぶ」(3/3)
- 第15回 「犯人に告ぐ! 愉快犯に対する伝説の緊急告知」(2/24)
- 第14回 「世界の政治的均衡に革新的変化をもたらすSNS」(2/17)
- 第13回 「2011年、ISO26000でCSR報告書の流れが変わる」(2/10)
- 第12回 「散見されるフェースブック利用者のモラルハザード」(2/3)
- 第11回 「独裁政権をも倒すフェースブックの脅威」(1/27)
- 第10回 「『噂』と『事実』の垣根が崩壊寸前」(1/20)