【若手コピーライターが語る醍醐味(3)】味村真一さん「360度、全方位から商品を見てコピーを考えるトレーニングの場」

「宣伝会議」9月1日号から期間限定で連載が始まった「若手コピーライターが語る!宣伝会議賞の“醍醐味”とは?」。誌面ではスペースの都合上、泣く泣く割愛した質問に対する回答を毎週紹介します。3人目は第60回朝日広告賞 梶祐輔記念賞を受賞した、フリーランスのコピーライター 味村真一さんです。

味村さんの宣伝会議賞の応募歴を教えてください。

初めて応募したのは大学生のときの第44回(2006年)。コピーライター志望だったため、受賞してプロになるきっかけをつくることが目的でした。100本のコピーを自信満々で応募したにもかかわらず、結果は一次審査通過がたったの2本。自分の考えが甘かったことを知りました。その後、優秀作品集の『SKAT』や『コピー年鑑』などを読み漁り、「そもそも良いコピーとは何なのか」を徹底的に勉強するようになりました。

2回目の応募となった第45回(07年)では、養命酒製造の課題、薬用養命酒のコピーが最終ノミネートまで残り、手応えを感じました。応募したコピーの中で一番好きなコピーが評価されたのは、そのときの自分にとって大きな自信になりました。

第47回(09年)、4回目の応募で初の協賛企業賞を受賞。会社を辞めてフリーになったばかりで仕事もなく、「今年受賞しなければ後がない」と覚悟を持って臨みました。受賞したのは朝日生命保険の「女性を応援する朝日生命保険」という課題。応募した中で自信のあるコピーでした。

ここ数年は毎回2000本書いたものを200本に絞って応募しています。一次審査通過率は良いときで15%〜20%ぐらい。とにかく数をたくさん出す方が良い、という人もいますが、良いコピーを選べることもプロとして生きていくためには必要。そのため、通過率にはこだわっています。傾向と対策を勉強することも大事ですが、心の底から本当に思ったことを書く方が、強いコピーになるのかもしれません。

広告賞へのチャレンジによって味村さんが得たものとは。

フリーランスのコピーライターといっても、独立して最初の一年はほとんどフリーターのようなものでした。フリーとして最初に来た仕事は、実は広告賞の受賞がきっかけです。農林水産広告賞で審査員の吉岡虎太郎さん(博報堂クリエイティブ・ヴォックス)に審査員特別賞をいただいたのですが、その作品を見た広告会社の方から仕事の依頼をいただきました。その後、宣伝会議賞で協賛企業賞を受賞したり、会社員時代の最後に制作した仕事がOCC新人賞でノミネートされたり、運良く同じ年に受賞・ノミネートが重なって、徐々に仕事が来るようになりました。

今、フリーランスとして様々な仕事をいただいていますが、営業活動をしたことはほとんどなく、多くの仕事は知人からの紹介です。フリーランスとして大切な「人とのつながりをつくる」ことに、広告賞の受賞は一役買ってくれているのかもしれません。無名の存在である自分を多くの人に知ってもらう。はじめて仕事をする相手に、会ったことのない自分を信用してもらう。「○○賞を獲った味村さん」と、周りの人が紹介しやすい人間になる。もちろん仕事をする上で、誠実であること、一生懸命であること、コミュニケーションが取れることなど、人として「やりやすい相手」と思ってもらうことが一番大切なのは言うまでもないのですが…。

また最近、一緒に広告賞に応募したデザイナーから仕事をいただくことが増えています。デザイナーの方とつながることでその後の仕事が広がる、という理由だけでなく、チームを組んでやる意義はあります。組む相手によって、進め方も完成形もまったく違ってくるのが面白いですし、自分一人では辿り着けないアウトプットが必ず出てきますから。

味村さんが考える「宣伝会議賞」の面白さ、醍醐味とは。

まず、普段の仕事では手掛けられない商品のコピーが書けること。面白そうな商品や好きなクライアントの課題がたくさんあってワクワクします。また、近年は「高齢者に○○を使ってもらうコピー」「若者に○○を売るコピー」など、課題が具体的で面白くなってきている気がします。

次に、コピーを自由に考えられること。ふだんの仕事だと、つい狭い範囲でコピーを書いてしまいがちですが、本当は実務こそ幅広いアイデアを求められていたりする。360°全方向からコピーを書く思考のトレーニングとして宣伝会議賞は役に立ちます。

最後に、コピーをたくさんの人に見ていただけること。普段、クリエイティブディレクターや先輩にコピーを見てもらえることが少ない環境なので、審査員の方々にコピーを評価してもらえることは、評価が良かろうが悪かろうが、とてもありがたいことです。

最後に今後の目標について聞かせてください。

まずは、一つひとつの仕事でワークするコピーを書いていくこと。その仕事の中で自分は存在する意味があるのか。フリーランスは常に問われているような気がします。クライアントと世の中のために機能する、しっかりと責任を果たすコピーを書いていきたいです。

その上で、広告賞などで結果を出したいと思っています。賞はあくまで結果で、最優先するものではありませんが…。実務ではこれまでノミネート止まりなので、今まで以上にたくさんの人が「いいね!」と言ってくれる仕事がしたいと思います。組織に入ることも含めて、そのための道を模索中です。

みむら・しんいち
東京コンサルトを退社後、フリーランスのコピーライターに。最近担当したクライアントに、オリンパス、明治、森永乳業、日本調剤、河合塾吉祥寺現役館など。そのほか、新卒・中途採用広告や、個人商店・地域団体などの「東京をローカルから元気にする仕事」、SNSサイトのコンサルティングやイベント企画なども。


【バックナンバー】

『宣伝会議賞』
日本最大規模の公募広告賞「宣伝会議賞」は第50回を迎えます。1963年にスタート以来、広告界で活躍する一流のコピーライターのほか、糸井重里さん、林真理子さんといった著名な書き手を輩出してきました。50回目となる今回は50社の協賛企業から課題が出されており、第一線で活躍する100人のクリエイターが応募作品を審査します。課題は9月1日発売『宣伝会議』本誌にて発表、2012年10月31日が締め切りとなります。
第50回 宣伝会議賞
第50回 宣伝会議賞
第50回 宣伝会議賞
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ