乱立するキュレーションサービス
ここ数年で「キュレーション」の文脈で語られるWEBサービスが急増しています。Twitterをまとめる「Togetter」。気に入った写真を共有しあう「Pinterest」。ソーシャルメディアからの情報を集約して届けてくれる「Flipboard」、「Summify」、「paper.li」。WEB上のあらゆる情報を人がキュレーションする「NAVERまとめ」「Storify」などなど。先日はあのTwitterもキュレーション的なツールをリリースすると発表しました。
そもそも「キュレーション」とは何なのか。語源は、美術館や博物館の「キュレーター(学芸員)」です。美術館などの展示テーマを考え、それに合った作品を世界中から集める専門職である「キュレーター」からきています。それが転じて、WEB上のあらゆる情報を、人が介在して整理することが「キュレーション」と呼ばれるようになりました。
「検索」では探せないもの
先日、NHN Japanはオフィスを渋谷に移転しました。リクルート時代もオフィス移転を何度か経験しましたが、オフィス環境が変わるとき、真っ先に困るものがあります。そう、ランチです。
渋谷で飲んだことは結構あるけど、ランチを食べたことはほとんどない。とりあえず「食べログ」などで検索してみますが、お店が多すぎてどれを選べばいいかわからない。メニューで絞り込もうと思っても、食べたいものが明確に決まっているわけじゃないから絞り込めもしない。ランチのお店の当たり外れが、午後の仕事の進み具合に大きく影響を与える!といっても過言ではありません。その日の気分に合う、ベストなお店を選べるかどうかがキモなのに、行くあてもないまま途方に暮れていると、Facebookのタイムラインに、ある「まとめ」が飛び込んできました。
おお!なんて親切な人がいるのでしょう。僕を始め、このまとめを参考にランチの店を決めた社員も多くいたようです。みんなきっと午後の仕事がはかどったに違いありません。まとめてくれた方、ありがとうございました。
キュレーションの本質
このように「検索では、探せない情報」って、日常の中に結構ありますよね。「新宿で大事な接待をするのにピッタリなお店」「衝撃のラストが待っている映画」「仕事の能率が上がるスマホアプリ」などなど。どれも検索するだけでは、すぐに見つからない情報です。そういう「検索では出会えない情報」を媒介する手段として、キュレーションは生まれました。
キュレーションの本質は「情報を収集、選別し、見やすく編集して誰かに伝えること」だと考えています。先ほどの例で言えば、渋谷のランチ情報を収集したのちに、自分の考えるオススメなお店だけ選別し、NAVERまとめで編集してNHN社員に伝える。そういう意味では、雑誌やテレビなどがやってきたことと大きな違いはありません。
では、なぜここに来て「キュレーション」というワードがここまで注目されるようになったのか。その理由を語る前に、これまでキュレーション的なことをやってきた雑誌やテレビにさえも、キュレーションが浸透し始めているという面白い現象が起こり始めているので、次回はその点についてお話ししたいと思います。
桜川和樹「100万人のメディアを潰した男、キュレーションを語る。」バックナンバー
- 第9回 元記事の24倍もRT…「まとめ」がシェアされやすいワケ(2/8)
- 第8回 編集の民主化の夜明け(後編)(1/25)
- 第7回 編集の民主化の夜明け(前編)(1/11)
- 第6回 R25式モバイルの失敗で学んだ「編集部」の限界(12/14)
- 第5回 複雑化した社会に追いついていないメディアの課題―村社会時代からソーシャル時代までを振り返る(11/30)
- 第4回 「情報の受け手」はテクノロジーに夢を見るか?(11/16)
- 第3回 「アメトーーク」もキュレーション?ネット以外でも加速するメディアのキュレーション化(11/2)
- 第2回 検索ってときどき不便。ランチ難民の僕らの前に現れたヒーローって?(10/19) こちらの記事です
- 第1回 情報爆発の時代、キュレーションでメディアは変わるのか?(10/5)