データを読み解く力
得丸英俊(電通レイザーフィッシュ代表取締役)
メディアがデジタル化していく中、それらの上で展開されるコミュニケーションからは嫌になるほどデータを取得できる。問題は、その活用の仕方。継続的にデータが得られるので、それらをさばく仕事がルーティン化し、新しい発見もないままデータ処理に追われるということも現場では少なくない。業務の継続性も大切だが、昔決めたKPIが適切な指標であるとは限らない。データを処理するツールやデータ取得方法の革新とともに、得られるデータの質も変わる。それらを踏まえて、方法を見直す必要もある。
仮説無き調査は失敗すると言われるが、データの活用も同じこと。PDCAだ、運用だ、ということで流してはいけない。それらのデータから何が分かり、その結果どういう次のアクションに示唆を与えられるのか、その仮説がなくては、データに振り回されるだけだろう。仮説構築力と、次のアクションをイメージした分析力が必要だ。言い方を変えれば、データとリアルの現象を結び付けて考えられる想像力が大切だ。データだけが独り歩きすることほど恐ろしいことはない。
ちなみに、デジタルマーケティングの領域では日々多くの調査結果が紹介されている。どんな結果も意図をもって導かれている。調査した例がどういう仮説を持っていたのかをイメージしてみることで、分かってくることはたくさんある。それにより、データを読み解く力も鍛えられてくるはず。母集団や調査手法も考慮せず、結果を鵜呑みにはしないように。(「宣伝会議」2011年4月1日号から)
※毎月1回掲載(全4回)、次回は2011年5月掲載予定
(とくまる・ひでとし)
90年代後半から、いわゆるデジタルマーケティングの領域へ。09年に電通レイザーフィッシュの社長に就任、“Experience Innovation”をスローガンに、次世代Agencyのカタチを模索中。