矢嶋健二さんに聞く(前編)はこちら
矢嶋健二プロフィール
京都府出身。2006年にTwin Planetを設立、代表取締役に就任。カルチャーブランディングカンパニーと銘打ち、独自のライフスタイルマーケティング“Edge Marketing”戦略を展開。渋谷のギャルマーケットをはじめとし、原宿・秋葉原といった特殊マーケットに専門特化したマーケティング戦略から普遍的価値を創造。小森純や、鈴木奈々の発掘やファッション雑誌Edge stlye(双葉社)やNicky(セブン&アイ出版社)のプロデュース、若年層ママ向けで日本最大級のイベント「ママコレクション」など多数手掛ける。その他にも、数多くの企業や官公庁との取り組みも積極的に行い活躍の幅は多方面に拡大中。
「人」を主役にするのが、いちばん伝わりやすい。
並河: 矢嶋さんは、いつでも、ギャルモデルの女の子一人を主役にして、ストーリーをつくっていきますよね。
僕は、これからは、「個人」の時代だと強く感じていて。
ネット上で個人から寄付を募るクラウドファンディングという仕組みがあるんですが、支援を募るとき、「プロジェクトの代表一人の写真を出したとき」と「プロジェクトチーム複数人の写真を出したとき」と「顔写真を出さなかったとき」を比べてみた海外の事例があるんです。
どの場合がいちばん支援が集まったかというと、結果、代表一人の顔を出したときがいちばん集まったんです。
矢嶋: 情熱や生き様が見えるってことですよね。何か新しいことをはじめるとき、「人」を主役にするのが、いちばん伝わりやすいんです。
ぜんぶさらけだして、ぜんぶやるしかない。
並河: そうしたギャルの思いを主役にしながら、新しいモノやコトを、商品開発、イベント、雑誌、ウェブ、店頭……とすべてプロデュースしていきますよね。ときには、流通やメディア、ブログサイトとも組みながら、雑誌やイベント、オンラインショップ等も立ち上げることもあって。
なんていうか……「完結した一つの世界」をつくろうとしている、と感じます。
矢嶋: 手間はかかるんです。でも、一部分だけやって、「あれは俺がやったんだぜ」って、それこそ嘘じゃないですか。
ぜんぶやるからこそ、理解が生まれ愛着が深まる。
SNSも進化して、ネットで調べれば何でも分かる時代で、もうユーザーに、嘘はつけないし、演出も難しいですよね。だったら、ぜんぶさらけだして、ぜんぶやるしかないんじゃないか、と。
ある商品があって、それを使っている女の子たちがいて、その世界すべてを一気通貫でやらないと、だめだと思っています。
でも、逆に、その世界全体を知っているから、絶対失敗しない確信もあるんです。
新しい市場をつくっていく気概。
並河: 矢嶋さんは、これから広告は、どうなっていくと思いますか?
矢嶋: 今までの広告って、たとえるなら……今苦戦しているグラビア業界に似ていると思うんです。
並河: グラビア業界……ですか?
矢嶋: そう。
グラビア業界って、彼氏がいるの、いないのっていう、女の子のリアルな部分をまったく見せないですよね。でも、一部分に過ぎないきれいな姿をちょっと見せられても、共感もできないし、中途半端だと思う。これだけ情報があふれている中、見せるならぜんぶ見せなくちゃ、やるならぜんぶやらなくちゃ、もう勝負できない。モノを売るという行為において、広告って、パーツですよね。一部分だけを素敵に見せてなんとかしようっていうのは、そもそも無理がある。
広告は、広告だけじゃなくて、ぜんぶやる、という方向に行くと思います。
それが、新しい市場をつくっていく気概というか、スタンスの持ち方だと僕は思うんです。
並河 進「広告の未来の話をしよう。COMMUNICATION SHIFT」バックナンバー
- 矢嶋健二さんに聞く(前編)「ゼロから市場をつくりたい」(11/28)
- 松倉早星さんに聞く(前編)「解決しない広告」(11/7)
- 佐藤尚之(さとなお)さんに聞く(前編)「効率じゃないコミュニケーションへ」(10/24)
- 丸原孝紀さんに聞く(前編)「ホットパンツで革命を」(10/3)
- 箭内道彦さんに聞く(前編)「バラバラになった日本を、広告の技と愛でつなげたら」(9/19)
- 中村洋基さんに聞く(前編)「世界をつまらなくしているものに抗いつづける」(9/5)
- 永井一史さんに聞く(前編)「デザインとは、もともと社会をよくするためのもの」(8/22)
- 澤本嘉光さんに聞く(前編)「広告の未来は、広告をつくっている僕らが決めることができる」(8/1)