経済回復、被災地復興道半ばだが、政権の交代でどこまで変われるか?
2012年は、「経済停滞」、「政治空白」、「外交力欠如」「復興道半ば」など、今の日本を象徴する言葉で彩られ、大きく国力を喪失してきた。思えば、昨年12月に北朝鮮の金正日総書記が死去し、今年に入り三男・金正恩氏が正式な後継者として本格的な動きを見せた頃を皮切りに、世界各国でリーダーが変わり、世界情勢が急激に変化した年でもあった。日本はそうした中、荒れた大海に浮かぶ難破船のように翻弄され続けた。
今年1月には台湾(中華民国)総統選挙がおこなわれ、国民党の馬英九氏が民進党の蔡英文氏を破って再選を果たした。2月にはイエメンで大統領選挙が実施され、副大統領のハディ氏が当選した。3月にはロシア大統領選で60%以上の票を得てプーチン氏が当選、4月にはフランス大統領選でオランド氏が現職のサルコジ氏を敗って当選を果たした。10月には中国で5年に1度の共産党大会が開催され、胡錦濤総書記から習近平氏にバトンタッチされ、首相を含めた政治局常務委員会のメンバーも一新された。11月には米国での大統領選で接戦の後オバマ氏が再選し、残すは12月19日に予定されている韓国大統領選で、与党セヌリ党と最大野党民主統合党の一騎打ちでどちらが勝利を収めるかに注目が寄せられている。
世界各国のリーダーが交代したことで、その国の体制・組織・政策も維持継続される部分と新しい部分が明確になってきた。世界情勢は依然として緊張関係にあり、新リーダーは国民の期待を一身に受けて、具体的政策を打ち出し行動に移す必要性に迫られている。日本の自民党に対する国民への期待は、そうした各国の状況を踏まえても、さらに大きく、スピード感が伴うことが重要と考えられる。
当時、国民の大きな期待に支えられて与党となった民主党は、今回の参院選の歴史的大敗を受け、12月16日の記者会見で野田首相自ら「国民の審判」「結果責任」などの言葉を放ち、党代表を辞任するとの発表を行った。国家の緊急時に「結果」が出せなかった与党代表の末路である。2007年9月、参院選の自民党の大敗の責任をとり辞任した安倍晋三元首相のときから既に約6年が経過しているが、その間7人もの首相が慌ただしく交代し、「結果」は未だ見ることができない。皮肉にも、同じ参院選で地獄を見た民主党から、再び安倍氏にボールは戻され、迷走する日本の舵取りを担うことになった。
国家のトップが次々に交代する危機的状況を「政治空白」と他国から揶揄されている日本は、新しい政策に基づき具体的に着手し、世界に認められる大国として再生できるのだろうか? 6年間の「空白」の後、再び政権を奪取し、2度目の首相を託される安倍氏は、国内外から注目される一方、これまでにない重い責任を負っている。具体的な政策の着手と国内外への発信能力が試されている。
「尖閣」「竹島」は、領有問題の一端にすぎない
領有問題は当事国間での交渉、他国への周知・認知、国際法上での検証、同一問題を抱える他国との協議・協調など、国力が試される試金石である。また、安全保障という視点からも非常に重要で、領空・領海の境界における侵犯への対外的発表や警告・制裁活動などの対応も今後、日本の政策を明確にしていく必要がある。
内閣では参与として経済に詳しい専門家を招聘することを決定したが、同様に外交や危機管理の専門家を招聘し、政府の戦略として方向性を決めていくことが優先課題となっている。政府の対応が弱腰と見られれば、どこまでも要求が続くという近隣諸国間での領有問題は、安全保障や国益の観点からも先送りが難しい時期に入ってきており、新政権での戦略策定や具体的な実効的対応に期待したい。
復興へのビジョン、ロードマップの明確化
日本の場合、災害対応計画においては防災やシミュレーションの分野では他国に秀でている点も数多くある。しかし、実際に発災してみると、緊急災害時の初動対応やその後に続く復興へのビジョンは不明瞭だ。以下は、米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の自治体のための総合地震対策指針の大項目である。
(地震対応の構成要素と活動:大都市編)
3つのマトリックスは非常に詳細に計画され、「緊急時対応」や「復旧」については、より精緻に策定されている。何よりも重要なことは「想定外」の事態が発生することを前提に作られていることである。その結果、実効性において柔軟性の高い「緊急時対応」や「復旧」計画が生まれる。日本の防災計画や対応マニュアルにも同様の項目が存在するが、発生シナリオに重点が置かれるあまり、現場の危機管理やその後の復旧に対する計画が手薄になっていることは否めない。災害大国である日本においては、その特性上、地震や天災のリスクから逃れることはできない。東日本大震災の復旧・復興へのロードマップを明確にし、速やかな実行態勢へ移すことのみならず、今後予定されている災害対応対策をしっかり見直すことが不可欠だ。
白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
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