玄侑 宗久(作家、福島県福聚寺住職)/イラスト:田中ひろみ
「玄侑宗久さんに聞く禅についてのQ&A(2)」はこちら
Q8 自力をやめて仏にすがる他力本願とか、他の宗派よりも自分たちの教義が優れていると排他的なことをいう宗派もあります。その点、禅宗は他と違う感じがしますが、いちばん違う点はなんだと思われますか。
A 禅は、その名のとおり、「禅定」を重視します。坐禅や作務、あるいは全ての日常のなかでその訓練をするのです。これはいわば宗教にとって最もベイシックな部分ですが、服装で言えば下着を着ただけともいえます。その後どんな服をまとうことも可能ですから、たとえば音楽家にも書道家にも大工さんにだって禅はありえるでしょう。いわば、あっさり宗教の枠組みを超え、他の分野で活かせるのが禅だと思います。
Q9 禅宗には臨済宗、曹洞宗、黄檗宗がありますが、住職の仕事の内容には、何か違いはあるのでしょうか。
A 住職の仕事の内容は、宗派による違いより、むしろ個々のお寺の事情によるものが多いと思います。
Q10 臨済宗の公案禅、曹洞宗の黙照禅、黄檗宗の念仏禅では、心身への影響(効果・効能)はどんな違いがあると考えられますか。
A 身心への影響という点では、入り口近くでは大差はないと思います。というのも、初心者に公案を用いるところは少ないからです。まずは所作を身につけ、それから禅定を体験し、その後に仏の心も学ぶのでしょうが、仏の心の型を学ぶ方法が公案なのです。
Q11 禅の修行では掃除の仕方も型が決まっているのはなぜですか。禅では神の存在や教義を押し付けることがないのに「型」が細かく決まっていることには何か理由があるのでしょうか。
A 型があったほうが、迷いなく動けますし、習熟して無意識になりやすいからです。無意識にできるようになったことはすでに自分の一部ですから、修行によって変わる部分でもあります。
玄侑 宗久(作家、福島県福聚寺住職)
1956年福島県三春町生まれ。慶應義塾大学中国文学科を卒業後、さまざまな職業を経験してから京都天龍寺専門道場に入門。三春町福聚寺の副住職をしながら書いた『中陰の花』で第125回芥川賞を受賞。花園大学国際全学科および新潟薬科大学応用生命科学部の客員教授。福島県立医科大学の経営審議委員、東京禅センター理事、東日本大震災復興構想会議委員、原発で被災した子どもたちを支援する「たまきはる福島基金」の理事長でもある。禅についてわかりやすく解説した著書多数。
イラスト:田中ひろみ
丸の内はんにゃ会代表。はんにゃ会へは創立当初から携わり、現在は3代目の代表として活動。仏像巡りから荒行まで精力的に体験している。女流仏像イラストレーター・ライターとしても活躍中。奈良市観光大使。『美しき仏像』(ぶんか社)、『田中ひろみの勝手に仏像ランキング』(メディアイランド)『クイズで入門 日本の仏像』(講談社+α文庫)など、著書多数。
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